NEXT WEEKEND DATE

「唐揚げにキュッと絞るレモンみたいに、気軽に使う」
「葉野菜のサラダ感覚で香りごとモリモリ食べる」

そんなふうにハーブをもっと身近な存在として、カジュアルにワイルドに楽しみたい…!
今月の「かぞくごと」では、食欲と料理欲を掻き立てるようなキッチンハーブを特集します。

今回、ハーブの楽しみ方について教えてくれるのは、HERB STAND(ハーブスタンド)代表の平野優太さん。

冒頭の「キュッと絞るレモンみたいに」「サラダ感覚でモリモリ」とは、植物を愛するハーブ博士の平野さんから出た言葉。

効能や効果に気を取られすぎず、ハーブを身近な野菜感覚で、「おいしい」食材として楽しむのが、今回のテーマ。

ハーブを知って、育てて、料理して。暮らしに彩りと豊かな時間を与えてくれる、ハーブライフを楽しみましょう。

教えてくれた人


平野優太さん

HERB STAND(ハーブスタンド)代表。標高700m~800m の寒冷地で露地栽培するハーブと、富士山の北麓に自生する山野草を取り扱う生産事業を行っている。野性味あふれるハーブに魅了されたシェフやパティシエ、茶匠や調香師などが平野さんの元に訪れ、新しい活用法を共に研究。ハーブを使った商品開発やハーブティーのブレンド考案、ハーブガーデンの監修など様々な活動を行いながら魅力を発信中。
Instagram

 

目次

ハーブを育てる前に知ると楽しい!
step1 ハーブの個性を知ろう
step2 ハーブの食べ方を知ろう
step3 ハーブの加工&保存を知ろう
季節別!ベランダハーブを元気に育てるコツ
ハーブの面白さを知れば、いい循環が生まれる

 

ハーブを育てる前に知ると楽しい!
step1 ハーブの個性を知ろう

ハーブを日々の暮らしで楽しむには、まず「知る」ことが大切、と平野さん。

平野さん
「例えば、チャイブというハーブはネギ科の植物で、アサツキの仲間。それを知っていれば、スープのアクセントに入れようかな、和食にも合うかも…とイメージがしやすくなりますよね。それぞれのハーブの個性や、どんなハーブと仲間なのか、自分が惹かれるハーブはどれか…などを知っておくと、活用の幅がぐんと広がると思います」

 

ザ・定番!のキッチンハーブ
(オレガノ、ローズマリー、タイム、セージ、スペアミント)

(写真左上から時計回りに)
オレガノ/トマトやチーズと相性がよくイタリアンでお馴染み。
ローズマリー/強い香りと苦味を持ち、肉や魚の香りづけに最適。
タイム/シソ科の植物で清々しい香りが特徴。煮込み料理やハーブティーに。
セージ/清涼感のある爽やかな香り。バターと相性がよく、パスタに合わせても絶品!
スペアミント/マイルドな清涼感とほんのり甘い香りが特徴。

平野さん
「まずは、初心者でも使いやすいスタンダードなハーブたち。肉や魚の香りづけに添えたり、ハーブウォーターにしたりと、使いやすく育てやすいものをピックアップしました。香りを足しつつ、素材のおいしさを引き出してくれます。後でお伝えする、ハーブのアレンジでも大活躍するハーブです」

 

柑橘の香りを持つハーブ
(レモングラス、レモンバーベナ、レモンマリーゴールド)

(写真左上から時計回りに)
レモングラス/アジア料理やハーブティーとしてよく使われる。
レモンバーベナ/やさしいレモンの香りで他のハーブとも合わせやすい。
レモンマリーゴールド/マリーゴールドの一種。花(写真左下)も生で食べることができる。

平野さん
「レモンという名がつくハーブは、シトラールという柑橘の香り成分を持ち、どれもフレッシュなハーブティーで飲むと本当においしい。シトラールの含有量はそれぞれ異なるので、香りが優しかったりシャキッと強かったりと、口にすると個性を感じられるはず。柑橘系ハーブは、どのハーブと組み合わせても爽やかなおいしさへと調えてくれる、バランサーな役割も。その中でも個人的ないちおしは、レモンマリーゴールド。マンゴーやパッションフルーツを感じさせる、独特でトロピカルな芳香は唯一無二。カルパッチョなど淡白な魚料理に合わせると、最高においしく仕上がります」

 

野菜のような生食ハーブ
(ロシアンタラゴン、チャイブ、ワイルドロケット、サラダバーネット)

(写真左上から時計回りに)
ロシアンタラゴン/キク科ヨモギ属。独特の甘く爽やかな香り。
チャイブ/別名・西洋あさつき。
ワイルドロケット/ルッコラの原種。ピリッとした辛さとゴマの風味を持つ。
サラダバーネット/きゅうりのような青味を持ち、サラダなど生食で楽しめる。

平野さん
「ロシアンタラゴンは、サラダに入れてモリモリと食べるのが個人的に大好き。日本のヨモギにも似た香りを持つタラゴンは、ビネガー漬けにしてもおいしいです。ネギ科のチャイブは、“レシピに出てくるゆずをレモンで代用できるな”と想像できるように、ネギを使う感覚で使うことができます。サラダバーネットは、きゅうりのような青みのある味わいが特徴。名前の通り、サラダで食べたいハーブです。ワイルドロケットは、簡単に育てられるので初心者にもおすすめ」

今回挙げたハーブの共通点は、耐寒性や耐暑性を持つ多年草ハーブ。

バジルに代表される一年草ハーブと異なり、一度植えると数年はくり返し収穫できるそう。

「ローズマリーやタイムに代表されるように、多年草は経年とともに茎が木質化していくと、さらに丈夫になるので育てやすいと思います」と平野さん。

また、どのハーブも汎用性が高いのがポイント。

そのまま生食できたり、素材に漬け込んだり、ドライに加工できたり…そんな食べ方・使い方のバリエーションを次のステップでマスターしましょう。

 

step2 ハーブの食べ方を知ろう

サラダでもりもり食べる

フレッシュハーブの贅沢な食べ方は、なんと言ってもシンプルに生で食べること。

“添え物”としてではなく“ハーブが主役”のサラダは、お家栽培の採れたてだからこそ、力強さや軽やかさをダイレクトに感じられます。

様々な味わい、香り、食感が混じり合って、まるで体の内からエネルギーが循環するようなおいしさの虜になるはず。

オイルやビネガーでマリネするだけで、ぺろりと食べられます。

おすすめハーブ:オレガノ、ミント、チャイブ、タラゴン、ワイルドロケット、サラダバーネット

 

食材と一緒に調理する/テンパリングをする

ハーブの本領が発揮される、肉や魚などへの香りづけ。
一段上のテクニックとしては、油に加熱して香りを引き出す、テンパリングという手法。

① 温めた油にフレッシュなハーブをどさっと入れて、
②香りが油にうつったらハーブを取り出し、
③香りづいた油で食材を調理する。

葉物は焦げやすいので、油は弱火で温めましょう。

おすすめハーブ:定番のキッチンハーブ

 

塩にミックスして味わう

好みのフレッシュハーブを刻んで(ドライハーブなら粉砕したもの)、塩に混ぜるだけで作れるハーブソルト。

「変化球として試して欲しいのがミント。とっても塩に合うんです。ニュージーランドでは、ラム肉にミントゼリーをたっぷり合わせるのが主流なのですが、食べてみると納得。肉や魚料理を爽やかで奥深いものにしてくれます」と平野さん。

おすすめハーブ:全ハーブ

 

生食でそのまま/香りだけを生かす/調味料に加える、とバラエティに富んだ使い方ができるのがハーブの魅力。

ハーブさえあればすぐにでも実践できるのがうれしいかぎり。

平野さん
「個々の特徴を知った上で、“まったく異なるジャンルのハーブをブレンドして使うとどうなるかな?”と、いろいろと自己流で試してみて欲しいです。ハーブは懐が深いので、新発見のおいしさに出会えると思います」

 

 step3 ハーブの加工&保存を知ろう

その場でハーブを使い切れず…、ベランダでたくさん育ちすぎて…、ということがないように、ハーブを楽しみ尽くすアレンジ法を知っておくと便利。

「交流してきたシェフの中でも、ハーブを上手に使いこなすシェフに共通しているのは、加工方法のバリエーションが多彩なこと。一般のご家庭でも、ハーブが取り入れやすくなると思います」と平野さん。

乾燥させる

余ったハーブを長期間保存するのに最適なのが、ドライにすること。
フレッシュな青みのある香りとは異なる風味になり、また少量を使いたい時にも便利です。
網(100円ショップなどにもある衣類干しネットなど)に生のハーブを置き、風通しがよく直射日光が当たらない場所で乾かしておきます。
ハーブが乾燥したら密閉容器に入れて保存。
カビを防止するために一緒に乾燥材を入れておくと安心です。

冷凍する

なんとハーブは、そのまま冷凍保存も可能。
フリーザーバッグに入れて密閉した状態で冷凍庫へ。
ドライハーブにはないフレッシュ感が楽しめます。
注意点は、凍ったままの状態で使うこと。
解凍するとハーブが黒く変色してしまう場合があるため、凍った状態で煮込み料理や炒め物などに入れて加熱して使いましょう。

オイル漬けにする

オリーブオイルなどに漬け込むだけで、ハーブの香りが移りこみ、自家製のフレーバーオイルが完成。
パスタやサラダに絡めるだけでワンランク上の味わいに。
漬け込むハーブは1種類でも、複数ミックスしてもOK。
ハーブオイルを何種類か作っておくと、料理の幅がぐんと広がります。
漬け込んだハーブはオイルに残しておくとカビが生える場合があるので、早めに引き上げるのが◎。
ワインビネガーや酢に漬ければ、爽やかなハーブビネガーに。
料理はもちろん、炭酸や水と割ってドリンクにするのもおすすめ。

アレンジハーブをストックしておけば、あとは気分によって応用自在。
これがキッチンにあるだけで、食欲だけでなく料理欲も掻き立ててくれそうです。

 

平野さん
「サラダなどで食べる時、ハーブによっては、葉を枝から外して食べますよね。家庭では捨ててしまいがちな、その枝の部分もブイヨンとして使うことができるんです。全部余すことなく使うことができるハーブを、いろんな発想で気軽に楽しんでください」

 

季節別!ベランダハーブを元気に育てるコツ

ハーブの魅力を知ったところで、いよいよベランダに自分だけの“小さなハーブの庭”づくり。

「すぐ枯らしてしまう」という経験をした人でも上手に育てられるよう、平野さんに育て方の基本と春夏秋冬の手入れのコツを教えてもらいました。

平野さん
「まずは環境づくりから。ブランター栽培の場合は、できるだけ大きめの鉢に土をたっぷり入れて植えるのが基本。プランターに土をたっぷり入れることで、保水性や保養性を高めることが大切です。プラスチックの鉢ではなくルートポーチ(不織布製の植木鉢)にする、土にはパーライト(土壌改良材)を使うなど、水はけのいい土壌を作ってあげましょう」


梅雨前からアブラムシなどの害虫予防。希釈したお酢や牛乳など、天然の虫除けなどを吹きつける

間延びしたハーブや茂りすぎたハーブの切り戻しや剪定をする。風通しをよくして蒸れを防ぐ

夏の暑さを乗り越えたハーブに追肥をする。株元に落ち葉やチップを被せて、本格的な冬にむけて防寒対策を

ハーブの休眠期。あまりに乾く場合のみ給水。寒さに弱いレモンバーベナやレモングラスは室内へ


平野さん

「気をつけたいのが、虫がついてから駆除するのではなく、事前に害虫予防をしておくこと。そして、夏にはハーブが生い茂ってくるため、育ったら収穫をしてどんどん使うことが、ハーブの元気に繋がります。咲き終わった花もそのままにせずにカットし、葉に元気がない時はがっつりと切り戻して、リセットさせてあげましょう」

 

ハーブの面白さを知れば、いい循環が生まれる

ベランダで一つ一つのハーブの表情を観察するだけで、季節の移り変わりに敏感になり、周囲の小さなことを慈しむようになる。
平野さんのお話を聞いていて目に浮かんだのは、そんなハーブ生活。

平野さん
「ハーブには、日々の暮らしに彩りを与えてくれる、そんな力があります。歯磨き粉やタバコのメンソール、化粧品、お酒や料理の香りづけなど…実は、日常生活の様々な場面で見つけることができるハーブ。また、何気ない散歩道にもハーブはたくさん生えています。そんな身近なハーブに意識を向けてみるだけでも、豊かで楽しい気持ちになるはずです」

暮らしにいい循環をもたらしてくれる、自分だけの“食べられる小さな庭”を育んで、五感すべてで感じるハーブの心地よさを、たっぷり味わってみてください。

 

Text : Hitomi Takahashi
Edit : Tomomi Watanabe

Share On