「理想の暮らしを叶える」ことを目的として、栃木県庁と共に「地方移住」の本当のところを伝えてきた #DiscoverTochigi 企画。
企画3年目となる今回、私たちから提案したかったのは、「地方移住に興味はあるけれど、どんな一歩を踏み出そう」と思ったときに、「ショートステイ」という選択をしてみること。
実際に、暮らすように滞在することで、旅とは異なる何かが見えてくるのではないか?
そんな期待を込めて、10月末から11月頭にかけて栃木県のある地域で「ショートステイ」を3名の方に体験してもらいました。
今回体験するにあたってベースにしたのは、NEXTWEEKENDが大切にしている“WISHLIST”という考え方。
いつかは…と思っている「自分が叶えたいこと」を言語化して5つ掲げてもらい、それぞれに自分なりのテーマを持って過ごしてもらいました。
その4泊5日の移住体験の様子を、この冬3つの記事に分けて順にレポートしていきます。
第一回目のレポートは、フードデザイナーの中本千尋さん。
二拠点生活に興味があった、という東京在住の中本さんが、いざ地方で過ごしてみたら…?
この記事では、そのリアルな5日間の体験をまとめました。
料理を生業とする中本さんの体験移住先は「益子町」
中本さんが移住体験した場所は、益子町。
“焼き物の里”としても有名で、年に二回催される陶器市には県内外から多くの人が訪れます。
雰囲気のあるカフェやショップが点在する注目の里山エリアです。
中本さんはもともと関西出身。
3年前に東京に拠点を移したものの、コロナ禍による思いがけない生活の変化で、暮らしについて見つめ直し、より自分の心に刺さる場所を探す気持ちになったとのこと。
中本さん:
「栃木で移住体験を、という話を聞いたときに真っ先に思い浮かんだのが、益子町でした。器の里でもある益子は、料理家という仕事柄、日頃より興味があった土地。私のアトリエのあるお気に入りの家具も、益子町にあるpejiteというお店のものだったりも。そういった繋がりを感じて、移住体験先に選ばせていただきました」
地方移住については、「旅をしながらその土地で仕事をしてみて、自分的にしっくりくる場所が見つかれば二拠点生活をしてみたいと思っていた」と、以前より関心があった中本さん。
その理由は、「新鮮な野菜や食材が身近にある土地で、心身をいたわる生活がしたい」から。
自然豊かな益子エリアで、旅行では味わえない滞在をしてもらいました。
中本さんが益子で叶えた
5つのWISHLIST
中本さんは、料理家さんならではの「器と食」にまつわる具体的なテーマを掲げてくれました。
その土地で暮らすとなったら、仕事についてのビジョンを持つことは大切なこと。
現地で調達した食材を、その土地で調理することは、料理というクリエイティビティ面においても多大な刺激を与えるはず。
このWISHLISTを達成できれば、中本さんが理想とする二拠点生活に近づく大きなきっかけになりそうです。
1つ目のWISHLISTは「益子焼の歴史に触れたい」。
「食」にまつわる仕事をしている中本さんにとって、自身の感性を表現する器は生活に欠かせないもの。
中本さん:
「益子焼の器は、独特の色味と厚みがありますよね。たくさん見て触れられる機会にワクワクしていました」。
そんな中本さんがどうしても訪れたかったという「濱田庄司記念益子参考館」。
益子に定住し、人間国宝に認定された陶芸家・濱田庄司の自邸の一部を活用した記念館を見学。
益子焼を全国に広め、多くの若い陶芸家に影響を与えたと言われる彼の作品や収集品、登り窯などに触れて、現在の益子焼のルーツを知ることになった中本さん。
中本さん:
「どうして益子が器で有名になったのか、どうしてぽってりと厚みのある質感なのか。歴史や製法などの知識を得るだけではなく、現地にいて肌で感じるからこそ、土の質感が残る風合いや手に馴染む益子焼の魅力が、より深くわかった気がします。今後の料理教室で、益子焼について語れちゃうかも…!」
その土地の歴史を知らなくても、興味のある“何か”に焦点をあててリサーチすれば、住む場所との距離感もぐっと近くなる。
移住先と繋がるためのヒントかもしれません。
2つ目のWISHLISTは、「ずっと大切にしたい器と出会いたい」。
中本さんの滞在目的のメインでもあった器探し。
中本さん:
「土っぽい器に、あえて意外な料理を盛るのも面白いかも…ファッションのような感覚で私らしく楽しみたいですね」
器を求めて訪れた先は、陶芸店エリアの入り口に店を構える益子焼のギャラリー「陶庫」、感度の高いセレクトで県外にも名前が知られる「starnet(スターネット)」から、益子の歴史をよく知る老舗の陶芸店まで。
見つけた戦利品は15点にもなったそう…!
1つ目のWISHLISTで益子焼のルーツを知れたことが、無数の出会いの可能性から「これ!」と思う器とめぐり合うきっかけになったのかもしれません。
器を見ている間にも、「厚みのある益子焼のカップに、ミルクを使った料理とかも合いそう…」とイマジネーションが次から次へと湧き上がる中本さん。
さらに、お皿探しは「陶芸体験教室よこやま」での本格的なろくろ体験へ。
スタッフの方に丁寧にサポートいただきながら、器づくりに没頭した中本さんは、なんと30分間で8枚も製作(そのお店で過去体験した方の中で最高記録だったとか!)。
焼き上がりの器は、また後日(約2〜3ヶ月後)自宅に届くので、益子の情景を思い浮かべながら自分だけの器を待つ時間も、移住体験の特別な延長タイムに。
見て触って作って…と、器が生まれた土地の風土を感じたことで、器の表情は生き生きと、自宅で使うときにもその空気を運んでくれるに違いありません。
3つ目のWISHLISTは、「手になじむ古道具を探したい」。
益子にいくつかある古道具店に注目した中本さん。
流行に左右されず、いつの時代も人々の暮らしに寄り添ってきたからこそ、シンプルで使いやすく日常にすっと馴染む。
そんな古道具を求めて、以前から中本さんが大好きなショップ「pejite」を訪れました。
独自のリペアを施した美しい古家具の他、セレクトした陶器や雑貨など、手仕事が生きたアイテムが並ぶ益子を代表する人気店は、県外からもファンが通うほど。
ここで顔馴染みのスタッフ、佐藤さんに会うことができた中本さんは、益子のごはんスポットの情報を入手!
ものとの出会いを通して、地元ならではの貴重な情報を聞けるのも数日滞在するからこその醍醐味です。
その他にも「仁平古家具店」「内町工場」などの古道具店を巡って、宝探しのようなひとときを過ごすことができました。
「毎日何を食べようかな」と考えるのが楽しみだったという中本さん。
4つ目のWISHLIST「栃木ならではの味を研究したい」は、最初に思いついたことだったそうです。
益子町ならではの味を求めて訪れた先は「いろり茶屋」。
鴨鍋やイノシシ鍋などが一年を通して味わえる、里山料理のお店です。
「里山に来たからこそジビエを食べたいと思っていたんです。ここの鍋は、味噌味ではなく出汁がベース。関西出身の私好みの味つけで、体にじんわりと染み渡りました」
また別の日には、益子唯一の酒蔵「外池(とのいけ)酒造店」へ。
洗米や雫絞り、生酛造りといった昔ながらの製法を大切にしている蔵を見学し、手間と時間をかけて造られた銘酒をテイスティング(ちなみに、試飲したのが午前中だったので、その後もご機嫌な気持ちで過ごせたそう…!笑)。
料理家を生業にしているゆえ、その土地の食文化に触れることは仕事面においても大きな刺激を受けたはず。
五感を使った体験を心身に蓄積させて、次のWISHLISTへ。
最後のWISHLISTは、「道の駅で買った食材で料理を作りたい」。
「土地の空気を感じながら即興で料理を作りたい」という中本さんが、益子町の郷土料理をリサーチしたときに目にしたのが「ビルマ汁」。
名前のインパクトとは裏腹に、益子の一部地域で家庭料理として親しまれている「ビルマ汁」は、トマトの酸味にカレー風味が効いた旨味たっぷりのスープです。
夏野菜を使ったスープのため、実際に現地で食べることはできず、自分で作ってみることに!
食材は、新鮮な野菜や旬のフルーツが豊富に揃う「道の駅ましこ」で調達。
キノコなどの秋野菜を使い、スパイスの香りがより引き立つようにアレンジするのが中本さん流。
シェアスペース「ヒジノワ cafe&space」のキッチンをお借りして、身体が元気になるスープが完成!
(その様子のライブ配信は、中本さんのInstagramにアーカイブあり。レシピも公開しています)
中本さんのセンスと益子愛が感じられる、益子焼の器にしっくりと馴染む料理。
土地で作られたもの同士は意識せずとも馴染むようになっていて、それが郷土を作っているのだということに気づかされます。
作った料理は、今回お世話になった地元のお店の方々にもおすそ分け。
知識や食体験をインプットして、自分で料理をするというアウトプットまで達成できたのは、旅行ではなく移住体験のショートステイだから叶えられたことでもあります。
中本さんが体験した益子情報
Q.行きたい場所はどうやって調べた?
中本さんが活用したのは、Instagramのアンケート機能。
益子のおすすめ情報を募ったところ、フォロワーさん達からたくさんの情報が!
そちらを元に、訪れたいスポットをGoogleマップで管理。
距離感などを掴んだところで、5日間の行程を組み立てました。
Q.移動手段は?
現地での移動は徒歩がメイン。
陶器店の多くは城内坂エリアにあるのでお散歩がてら巡ることができます。
少し距離があるお店などに向かう際はタクシーを利用。
1〜2メーターで行けるところがほとんどでした。
Q. 宿泊場所は?
滞在中宿泊したのは「フォレストイン益子」。
公共施設のため過剰なサービスはなく、まさに“暮らすように”滞在できるのが魅力。
陶器市が催されるメインエリアにはタクシーで10分ほど!
中本さんは、足をのばして「フェアフィールド・バイ・マリオット・栃木もてぎ」にも一泊。
ここは隣に「道の駅もてぎ」があるので食材調達にも便利。
Q.おすすめの食事処は?
地元で人気の和食居酒屋「杣(そま)」、行列になる日もあるとんかつ店「ちとせ」、こだわりの自家製酵母のパン屋「日々舎」、器探しに訪れた「starnet」でもランチやカフェ利用が可能。
観光スポットとしてはもちろん、地元の人たちに根づいたお食事処のバリエーションがあるのが益子のいいところです。
Q.暮らすように旅するための拠点は?
益子町はコワーキングスペースが少ないので、PCなどオンラインで仕事する人にとってはWi-fi環境があると便利。
中本さんが移住初日にライブ配信をした、地域コミュニティスペース「ヒジノワ cafe&space」はコワーキングスペースとしての利用できるので拠点にするのにもおすすめです。
イベントのスペースレンタルも可能なので、何かを始めたい人のきっかけにも。
Q.滞在中困ったことは?
都心に比べるとお店の営業時間が短く、朝や夜に開いているところはほとんどありません。
「朝イチにコーヒーを飲みたい人は、自分で淹れられるグッズを持参すると良いかも」と、中本さんからのアドバイスも。
自分の生活スタイルに落とし込んだときの気づきを、移住前に準備できるのもショートステイ体験の利点かもしれません。
自分の暮らし方を選ぶ、その新たなる一歩に
中本さん:
「旅行でもひとつのエリアに5日間じっくりと滞在できる機会はあまりないので、とても良い経験になりました。次に来た時は、カレーを振る舞うイベントをしたいなと思い、今回キッチンをお借りしたヒジノワさんとお約束してきました。そういった訪れる楽しみが新しくできたのも嬉しいですね。また定期的に通いたい町になりました」
まるで以前から住んでいるかのように、心地よくも積極的な時間を過ごした中本さんの4泊5日は大変充実したものになったようです。
▲現地からレポートを行なったライブ動画もぜひチェックを。
中本さんをお手本に、自分が同じようにショートステイするとしたら…と置き換えてみる。
土地との関わり方、人とのつながり、自分の心境が、移住体験前と体験後でどう感じてどう変わるのか、期待したくなります。
東京からの人の往来も活発で、地方でありながらちょうど良い距離感にある益子は、物づくりを生業にしている人も多く、新しいチャレンジができるエリア。
この環境での体験は、新たな暮らしへの想像を膨らませてくれそうです。
益子のお土産をプレゼント!
【移住体験レポート vol.1】をご覧いただきありがとうございました。
下記のアンケートフォームよりご感想をくださった方の中から抽選で1名様に、中本千尋さんが益子で選んでくださったお土産セットをお届けします。
中本さんいわく、器はぜひちょっとしたおつまみ(これからの時期は、お正月のかまぼこなど!)をのせてほしいとのこと。
砂糖菓子のように可愛らしいお箸置きは、ゲストを招く際にもぴったりです。
アンケートフォームは質問5つのみ。
ぜひこの機会に、ご感想を聞かせていただければ嬉しいです。
募集期間
2021年 12月2日(木)〜12月29日(水)まで
当選者ご連絡
当選枠1名、1月上旬を予定。
※当選者の方にのみご連絡いたします。
※お客様の個人情報は本記事企画でのプレゼント発送にのみ使用いたします。
この記事は、NEXTWEEKENDと栃木県とのコラボレーションで制作しています。
Text:Hitomi Takahashi
Photo : Maya Masuda
Design : Hikari Mogami