NEXT WEEKEND DATE

こんにちは。NEXTWEEKEND代表の村上萌です。

「季節の楽しみと小さな工夫で、理想の生活を叶える」ということをコンセプトにしたNEXTWEEKENDでは、1ヶ月ごとに、その月のテーマを掲げて過ごしています。

2021年10月のテーマは「暮らしの周辺を好きになる

コンセプトはこんな感じ。

このテーマを噛み砕いて、みんなで楽しむSNS上のハッシュタグは #ご近所日和 です。

NEXTWEEKENDではこの月間のテーマに合わせて、叶えたいことをWISHLISTと呼び、毎月3つずつ提案しています。

今月のWISHLISTはこんな感じ。

✔️秋の開拓を楽しみたい

✔️愛しい景色を残したい

✔️部屋にも季節の色を取り入れたい

私は、この3つのWISHLISTを自分なりに噛み砕いた記事を毎月3本書いていますが、1本目となる今回は「愛しい景色を残したい」というWISHLISTに合わせて、「何度状況が変わっても、愛しい景色を守りたかった話」という記事を書きたいと思います。

NEXTWEEKENDでは幾度となく書いてきましたが、NEXTWEEKENDを運営している私の会社の名前は株式会社ガルテン、ドイツ語で庭を意味するGARTENは、私のアイデンティティでもある祖母の家がドイツ様式で、敷地の半分以上が庭だったことに由来しています。

築100年近い家だったので、当然ながら古く大きな木が沢山あって、基地を作ったり木登りしたりと好奇心を絶やすことなく遊んできましたが、祖母が天国へ行ってしまったのと同時に家も取り壊されることになってしまい、大好きな庭の草木もすべて切り倒されて更地になってしまいました。

“あと1週間で家が取り壊される”という状況を、私は今も何度も夢に見ます。

建具をすべてとりはずしNEXTWEEKEND編集部の現オフィスや、多くの方のご自宅に活用していただく、ということは叶ったものの、深層心理ではこの家を守ることはできなかったということに、どこかでずっと自分の力不足や後悔を感じているのかもしれません。

そんな中で、1本だけ当時移植に成功した木があります。

あの庭の中では、そう大きくはなかった梅の木です。

祖母が毎年6月前後に梅を収穫して、シロップを作ってくれていた梅。

家が取り壊される1ヶ月前、この木を表参道に移植したのと同時に、木の隣で2年限定のサンドイッチ屋をスタートさせました。

植木屋さんから「正直、うまくいかないかもしれない」と言われていたにもかかわらず、移植して最初の春、梅の木は綺麗な花を咲かせました。

起業してまもないころ、初めて社員を抱えた年にオープンした会社からすぐそばのサンドイッチ屋。

20代前半で就職することもなく起業してしまった私にとっては、刺激と焦り、不安と希望が入り乱れる日々でしたが、会社に向かう時は必ずこの小道を通って梅の木に挨拶をすることで、祖母に報告をできているような気がして、ひとつの心の支えになっていました。

この場所で沢山の出会いと挑戦を経験し、春夏秋冬、朝から夜まで、木はさまざまな景色を一緒に見つめてきてくれました。

あれから7年の時を経て、ついにこの場所がまた更地になってしまう時が来たようです。

前を通った友人に連絡をもらって見に行ったのは、残り10日という時でした。

大好きだった景色が壊れていく様子は、どうしても慣れることができませんが、工事現場の横で、祖母の家の梅の木は驚くほど元気に成長していました。

祝日で、現場には人の姿がありませんでした。

小さなカバンにスマホだけを入れてこの場を訪れてしまいましたが、「もしかしたら、明日の朝1番に切り倒されてしまうかもしれない…」と思うと、いてもたってもいられず、少し歩き回ると、なんとも目立つピンク色の紙が数枚落ちていました。

裏のカフェで急いでコーヒーを買い、サインペンを借りました。

セロハンテープも借りましたが、木にはうまく貼り付かなかったので枝に挿して帰ってきました…。

誰も知り合いがいなくなってしまったこの場所で気持ちを伝えるには、アナログ(?)な方法しか思いつきませんでした。


(字が汚いのは膝の上で書いたからだと思ってください…)

翌日、知らない番号から電話がかかってきた時はちょうど会議中で、久々に焦りで心臓がドキドキしましたが、今住んでいる九州に戻る日の早朝に、植木屋さんとこの場所で待ち合わせをして、奇跡的に木を移植することができました。

これは更地になるまで残り3日、つい先週のできごとです。


(大きく伸びた枝だけその場で剪定してもらいました。活躍してくれたピンクの紙も、シュールな姿で堂々と残っていました)

梅の木は今、少し離れた場所で養生してもらっているそうです。

春になったら、かつてはなかった私の実家に移植する予定。
(この数年の間に実家が引っ越して、少しだけ庭が大きい家になりました)

移植がうまくいくかは分かりませんが、これから先、あの思い出いっぱいの場所が更地になってしまう1週間前の夢を何度も見るようなことはなさそうです。

またいつか、この木から梅が収穫できる日がきたら、それで作る梅シロップは、私の家族にとってはずいぶんと歴史ある味になるんだろうな。

愛しい景色そのものが変わってしまうことは多々あって、自分の力ではどうしようもできないこともありますが、何もしない後悔よりも、その時できるベストを尽くすということ。

何年経っても、自分のアイデンティティを濃くしてくれるのはやっぱり祖母の家の庭なんだなと久々に痛感したのでした。

10月のNEXTWEEKENDのテーマは「暮らしの周辺を好きになる」

#ご近所日和 を楽しみ尽くして、それぞれにとって愛しい景色に沢山出会える秋の始まりになりますように!

 

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