NEXT WEEKEND DATE

大きな声では言いづらいちょっとした悩みや、あえて近い存在のひとには話しにくい悩みは誰にでもあるもの…。

この連載では、みなさまから匿名で募集したお悩みに、NEXTWEEKEND編集長 村上萌が答えていきます。

今日ご紹介するのは、ご家族の死と向き合う相談者さんからのお悩みです。


萌さんこんばんは。

いつもお悩み相談のコーナー拝見しています。
涙が止まらず、萌さんの今までの心温まる回答を思い出し、こちらに辿り着きました。
今回萌さんにご相談したいことは、家族の死や老いとの向き合い方です。
つい先日、90歳近い祖母の体調が急に悪化し、先生に最期になるかもしれませんと言われたことがありました。
その後一命を取り留めて、今は回復し体調も安定しています。
が、また急激な悪化があれば次はわからないと思いますし、今回の一件で寿命が少しずつ近づいてきている事を感じました。
その後、祖母は今までより力を入れて身の回りの整理を始めたことも、なんだか旅立ちの準備をしているようで…。
私はかなりのおばあちゃんっ子です。
私が産まれたときから祖母も同居しており、働く母の代わりによく面倒を見てくれました。
一人っ子の私の勉強相手であり友達でもいてくれました。
今どきでない古風な考え方が合わないと思って、若い頃反抗したことや冷たくしてしまったことも多々ありますが、たくさん愛情を注いでくれたおばあちゃんが大好きです。
そんなおばあちゃんが、ゆくゆくはいなくなってしまうという事実を、今回突き付けられたようで、頭では人は亡くなるとわかっていても、どうしても心が受け止めきれないのです。
そのことを考えては夜に涙が出て、実家に帰りおばあちゃんと話す時も思わず泣いてしまうときもあります。
まだ亡くなってもなければ、余命宣告を明確にされた訳でもないのに、です。
大切な家族の死や老いとはどう向き合ったらよいのでしょうか。
いなくなってしまったときのことを悲観して泣いてばかりでなく、あたたかい思い出を共有して、少しでも前向きに生きたいです。
でも、どうもそのようにできなくて…。
長々とすみません。
最後になってしまいましたが、寒い日々が続いていますので、萌さんみなさんも温かくしてお身体お気をつけくださいね。
いつも応援しています。
(27歳・女性・会社員)

こんにちは。

今週末に長崎への引越しを控えていますが、今は大阪の家のデスクからこれを書いています。

お悩みの原稿に向き合う時は、熱いコーヒーを片手に仕事部屋に向かい、そしてドアをきっちり閉めて、静かにパソコンを開いていました。

川が見えて、太陽が昇るのも沈むのも見届けられる窓際のこの席が大好きだったので、今回がこの場所で書く最後のお悩み回答か…、と思うと切なさがこみ上げてきます…。

最後だし、張り切って大阪節を詰め込んでおこたえしますね!

違うか。

さて、お悩みをお送りいただきありがとうございます。

大切な人の死に向き合うのは、本当に辛いですよね…。

特に今はコロナ禍で、病院で最期の時を一緒に過ごせないという方も多く、いつやってくるか分からないお別れに、とても不安なお気持ちでいらっしゃると思います。

ただ、死は自分を含めて避けることができず、今日産まれた赤子にだって、必ずいつかやってくるものです。

頭でいくら分かっていても向き合えず、考えるたびに絶望するほど辛いかもしれませんが、それほど愛しい家族に出会えた喜びを、どうか噛み締めてくださいね。

私も、今は亡き祖母との関係はすごく特別だと思っていて、(魔法使いのような人だったので、孫全員がそう思っていた気もしますが)今も、街で私くらいのお孫さんと歩いているお年寄りを見かけると口を開けてわんわん泣いてしまうし(前にカフェでその光景を見て突然泣き出して、隣に座っていた夫が白い目で見られて可哀想でしたが…)、祖母からこれまでにもらったお小遣いの、ポチ袋に書かれたメッセージは、ふいに見てしまうと涙腺スイッチが爆発して、なるべくその引き出しは開けないようにしていたりもします…。

(それでも定期的に読みたくなるんです。「短いスカートはかないように。パンツは大きく。社長より」とかツッコミどころ満載で。)

小さい頃は毎週末泊まりに行って、大人になってからも2人でいっぱい旅行に行ったし、初任給でご馳走したお寿司屋さんでは、祖母がしっかり酔っ払っていて、本当にチャーミングな女性だったな、なんてしみじみ思い出しています。

ただ、今祖母のことを考えると寂しい気持ちはあるものの、きっともう足も腰も痛くなくて、すごく楽しんでいるのだろうなぁ、という根拠のない確信があるから、お仏壇に手を合わせる度に「よかったねぇ」なんて声をかけていたりします。

というのも、祖母は亡くなる直前に一度、緊急入院をして、その後一命をとりとめたことがありました。

医師や他の家族がいなくなった病室で、私と2人きりになった時に、「萌、ばあばまた死にそびれちゃった。じいじに会いたかったなぁ。」とこっそり呟いたんですよね。

これが冗談だったのかは今はもう分かりません。

だけど、老後を思いっきり楽しみ尽くして、1人で船旅に出たり、徹夜で麻雀したり、ファンキーな祖母ではありましたが、祖父を始め仲の良い友達を次々に見送った彼女は、何十年もかけて、相談者さんのおばあちゃまのように最期の時に向けて準備をして、そして覚悟もしていたのだと思います。

家を訪ねる度に家具や食器は減っていたし、棺に入れるように、と用意されていたのは、祖父からの手紙、従姉妹が編んだマフラー、柘植の櫛のたった3つだけで、足の爪には、最期の時まで美しい桜色のペディキュアが塗られていました。

そして、以前はなかなか祖母に会えない時間が続くと「会えていない」という事実に、申し訳なくすら思っていましたが、今はむしろ、ずっと一緒にいるような気がして、心強いんですよね。

生前にどれだけ2人の間で関係を紡ぐことができるかが、今の距離感を作ってくれるのかな、なんて思っています。

私の話が長くなってしまいましたが、不慮の事故で家族を亡くしてしまう場合や、ましてやその相手が若く、一緒に過ごす想像をしていた未来が長いほど、人生をかけても乗り越えられないほどの辛さがあると思います。

ただ、死へ向かう道を、一歩ずつ自覚しながら90歳までしっかり生き続けられて、こんなに可愛い、相談者さんのような孫娘とも出会えたおばあちゃまだから、万が一何かが起きたとしても、悲しいだけのお別れではなく、お互いにとって、ちゃんと新しい関係が始まる気がします。

これまでしっかり関係を紡げて、そして今もなお、それを伝えられる状態にあるなんて、本当にこの上ないほど幸せなことだと思いますよ!

このような社会情勢で不安な部分もあると思いますが、これを機に「伝えておけばよかったな」が少しでも減るように、コミュニケーションできるといいですね。

優しいお手紙ありがとうございました。

応援しています!

 

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著者:村上萌
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