NEXT WEEKEND DATE

いろんな夫婦のかたちを紐解く連載「ふたりのこと」。

第4回に登場するのは、NEXTWEEKENDのコラムも好評なフラワーアートユニット「花とんぼ」。

パッと心が高揚する花束やアートを生み出すのはフラワーアーティストの座間アキーバさん、その魅力を届けるのがキュレーターの磯部エイミーさん。

ふたりは夫婦であり、同じ会社で働くパートナーであり、2人のお子さんの父と母でもあります。

大事にしている3つのルールはこちら。

 

「この人のアートを世の中に届けたい」


▲チャーミングな笑顔が魅力的。

 
数年前、ブランチパーティで出会ったふたり。

フラワーアーティストとして国内外のコンテンストで作品を発表していたアキーバさんと、MoMA美術館のアートディーラーとして世界を飛び回っていたエイミーさん。

エイミーさんが自然や花を用いたランドアートに興味を持っていたことを機に惹かれあい、2年の交際期間を経て結婚しました。

当初、共に仕事をする予定はありませんでしたが「花とんぼ」設立のタイミングでエイミーさんが美術館を退職しジョイン。

それは8年間数多くのアート作品にふれた中で「アキーバさんのフラワーアートを届けたい」という思いが湧き上がったからでした。

 
エイミー:
「アキーバのインスタレーションを目にした時『Wow!』ってしびれて。

色彩や造形が愛らしくて美しくて、この表現を届けようと心に決めました。

アートを生み出す夫とアートを届ける私が一緒に仕事することはとても自然で嬉しいことです」

 
アキーバ:
「僕の一番のきっかけは自分たちのウェディングパーティかな。

ふたりで会場の装花、演出、進行をセルフプロデュースして『エイミーと力を合わせればこんなに素敵なことができるんだ』と自信になりました」


▲思い出が壁一面に飾られている。右上が結婚式でつくったスタンプツリー。

 
仕事も生活も共にすることはつまり一日の喜怒哀楽を分かちあうことかもしれません。

別々の仕事をしていた頃は、キャリアゴールや悩みを理解しあうのが難しい時もありましたが、今はすべて共有できる喜びがあると話します。

 
エイミー:
「どんな出来事も同じ目線、同じペース、同じテンションで捉えられます。

やりたい仕事が決まった時は一緒にガッツポーズして、仕事と育児のバランスが崩れたら家族会議して。

毎日色んな感情を共有しているから、一日を終えた後の『お疲れさま』の一言がとても意味深いものになりました」

 

根っこは「自分を大事にする」こと。

夫と妻、父と母、ビジネスパートナー。
ふたりはその時々によって役割が変わりますが、どんな場面であっても個人の幸せを大事にしています。

 
アキーバ:
「家庭や会社など全体の幸せも大事にしていますが、いつだってお互いの好きなことを尊重しあっています。

日本では家族や子ども優先という価値観も根強いけれど、根本の自分を大事にしないと“らしさ”を失ってしまう。

それは結果的に全体にも影響を及ぼしてしまうと思うから」

 
エイミー:
「そうだね。妻でもあるしお母さんでもあるけど『自分であること』はいつだって大事にしたいです。

だからどんなに忙しくても好きなことにふれる時間を持つようにしています。

大好きな作家の展示のためなら何時間でも並ぶし、デヴィッド・ボウイの曲を聞くと涙が溢れちゃう。

そういうピュアな自分がなくなっちゃうと多分、苦しいから」


▲よーく目を凝らすとかわいいエイミーさんとお花が!

 
アキーバ:
「互いの個性を大事にしていると、意見が対立してけんかに発展することもあるよね(笑)

でもそれはフレッシュな証。

自分らしさを押し殺すのではなく意見を交わしあった方が、いつか今を振り返った時『毎日楽しかったね』って思うはず」

 
一人ひとりの幸せを大切に、というスタンスはお子さんに対しても同様です。


▲愛してやまないふたりのボーイズたち。

 
エイミー:
「以前、長男に何気なく『おもちゃを弟に貸そうね』って言った時があって反省しました。

長男にとっては弟が生まれるまでの3年間で遊びつくした大事なおもちゃ。

突然シェアしなさいって言うのはなんか違うと思って」

「長男にもお兄ちゃんじゃない個人としての自分がいるはず。

だから兄弟でもおもちゃを貸したくない時はそれでいいし、一緒に遊びたい時は思いきり遊べばいい。

個々を大事にすることで、家族が揃った時に最強になればと思っています」

 

意地を張ってしまってもハグで仲直り

互いの個性を大事にするからこそぶつかる場面もある、と素直に話してくれたふたり。

とはいえ夫婦のいざこざを仕事に持ち込むのはご法度。

ネガティブな出来事が起きたとしても「その日に解決」が仲良しの鍵です。

 
アキーバ:
「けんかの原因を明らかにしないと僕が引きずってしまうんです。

だからどんなに忙しくても寝るまでに話して解決します。

きちんと話せば理解しあえるし、嫌な雰囲気を終わりにできますから。

あと僕はすぐ解決しないと、けんかの原因そのものを忘れちゃう(笑)」


▲9月、葉山の一色海岸へ行ったときの一コマ。

 
エイミー:
「アキーバは本当に忘れるんです(笑)

以前けんか中に『原因分かってる?』って詰め寄ったら『I forgot it!(忘れたよ!)』って言い切られて爆笑しました(笑)」

 
ちなみにエイミーさんは謝るのがちょっぴり苦手。
意地を張って仲直りのタイミングを逃してしまうことも…。

そんな時の秘策をアキーバさんが教えてくれました。

 
アキーバ:
「基本は『ごめんね、エイミー。もう仲直りしよう?』って僕から働きかけることが多いです」

 
エイミー:
「でも私が頑固でうまく仲直りできない時もあって…」


▲浜辺でピクニック中。

 

アキーバさん:
「そういう時は“隙”を待ちます。
むすっとしていても、時間が経てばけんかを終わらせる隙が生まれてくる。

その瞬間、僕がエイミーに飛び込む。
『もう気にしなくて良いじゃーん!』ってハグ!」

 
エイミー:
「3回ハグされると『しょうがないなぁ』って許せるんです。

アキーバはそのさじ加減が絶妙だよね」

 
アキーバさん:
「僕の方が6.5歳年上だからね(笑)」

 

クリエイティブデートで本来のふたりに戻る

最近、小さな変化があったと声を弾ませるふたり。

それは「毎月クリエイティブなデートをする」という素敵な約束事です。

 
エイミー:
「昨年次男が生まれ、今年の夏にお花屋「The wagon」が広尾にオープン。

毎日充実していますが、裏を返せば一日があっという間に過ぎていきます。

このままだと互いの将来像がすれ違いそうで話し合いをしたのがきっかけ。

『子どもはいるけどやりたいこともキャリアゴールもあるよー!』って伝えました」

 
アキーバ:
「その時『彼女のことをもっと考えよう』と反省しました。

子どもが生まれて3年、家族が大好きで優先するあまり、妻が一人の女の子だということをちょっと忘れちゃっていた。
だからふたりきりの時間を作ることに」


▲アトリエにはいつだって季節の花が束ねられています。

 
その時だけ子どもたちは保育園や実家でお留守番。

月に一度、1時間でもいいからおしゃれを楽しんだり行きつけのお店でご飯を食べたりすることで、本来のふたりらしさを取り戻しつつあるそう。

 
エイミー:
「デート中は子どもより二人の話をシェアするように心がけて、すごくリフレッシュできました。

例えば昔は好きな映画や音楽の話って当たり前に共有していたけど、ここ数年は子どもの話に支配されていたから(笑)」

 
アキーバ:
「『僕たちの本来の楽しみ方ってこれこれ!』と呼び覚まされた気がします。

何かが大きく変わったわけではないけど、エイミーが無意識に抱えていた悪いエネルギーがなくなったよね」

 
エイミー:
「なくなった!だからアキーバに優しくなりました(笑)

やりたいことや好きなものを分かってもらえている安心感があるから、心持ちが全然違うんです。

夫婦としてまた一つ成長できた気がします」

 

記憶に残る夫婦に

「ふたりのこと」では最後に互いの好きな所、そして理想の夫婦像を聞いています。

今どう思っているか、これからどうなりたいか。その二軸にこそ夫婦らしさが表れるように感じます。

 
アキーバ:
「軸がぶれない所は本当に尊敬します。

僕も芯が強い方だけどエイミーはそれ以上。
普通の人なら諦める場面でも揺らがないよね。

あとはかわいいところ!」

エイミー:
「うふふ、私はアキーバの飾らないところが好きです」

アキーバ:
「それって褒め言葉?(笑)」

エイミー:
「シュッとして見えるけど実は同じ服を毎日のように着ていたり、とにかく自然体(笑)

波のようにゆらゆら揺れながら、でもどんな時も味方でいてくれて、何があっても夫婦は一緒にいるということを日々教えてくれる。あったかい人です」


▲いつかまた二人でロードトリップしたい!と話すふたり。

 
エイミー:
「花とんぼ設立から3年、これからはアキーバのフラワーアートを届けることにより力を入れたいです。
そこが原点だし惚れこんでいるから。

『何だかワクワクする』って思ってもらえる夫婦になれたらいいな」

 
アキーバ:
「そうだね、いいパワーを届けられるふたりになっていけたら」

 

自分であることを尊重する。
互いの魅力を活かし、弱さは受け止める。
ぶつかりながら、迷いながらも前に進む。

そんな等身大のふたりに、夫婦で自分らしく生きるヒントを教えてもらった気がしました。

 

Text:Nao Tadachi
Photo:Akiva Zama, Aimee Isobe
Edit:NEXTWEEKEND

Share On