大きな声では言いづらいちょっとした悩みや、あえて近い存在のひとには話しにくい悩みは誰にでもあるもの…。
この連載では、みなさまから匿名で募集したお悩みに、NEXTWEEKEND編集長 村上萌が答えていきます。
今日ご紹介するのは、現在妊娠中の相談者さんからのお悩みです。
こんにちは。はじめまして。
誰に話していいか分からず、辿り着きました。
現在、妊娠4カ月(14w3d)の妊婦です。
私は3年前摂食障害になり、161cmで36kgまで痩せました。
今は54kgまであり、朝、昼だけ食べています。
食に対し、食べる罪悪感などは消えたのですが、運動がやめられません。
ジムでランニングをしたり筋トレをしてしまいます。
妊娠してからも欠かさず継続しています。
主人は赤ちゃんを楽しみにしているのですが、私は変わる体型、増える体重に内心、流産してくれたらなと思ってしまう時があります。
実際、10wまで中絶をするか悩んでいました。
街で細い子を見ると羨ましく涙が出ます。
鏡でお腹、胸を見ては絶望感でいっぱいになり、中期中絶をしてしまいそうで現実逃避で眠りにつきます。
こんなんで赤ちゃん産めますかね、、
育てられますかね、、
産後スタイルが戻らなかったら自殺してしまいそうなくらい不安でいっぱいです。
(27歳・女性・主婦)
関西も大雨の1日。
最近毎年のように観測史上最大の天災が起こりますね…。
私たちが生きている今は、地球の歴史からしたら数秒にもならないような時間で、これまでも実に様々なことがあって今があるんだもんなぁ、と思いつつ、そうは言ってもウイルスにも自然災害にも、無力さを感じざるを得ない今日この頃です。
少しでも被害が少なくなることを祈るばかり…。
そしてお悩みをお送りいただきありがとうございます。
誰にも言えずにここに辿り着いてくださったとのこと、なんだか寒い森の中で店をやっている気分になりました…。
温かいものを急いで用意したい、そんな気持ち。
まだご自身の中で現実に対して感情が整理できていないかもしれませんが、いずれにせよ自分の中に生命が宿るという、ものすごく神秘的な時間が始まったところ、ご懐妊おめでとうございます。
3年の間、摂食障害と向き合って、食事に対する意識を変えながら妊娠へ向けて歩き出されたとのこと、きっと日常に潜んでいる、あらゆる情報や、突然の出会いにも敏感に反応してしまい、他人に見えている以上に孤独ですごく辛い3年間でしたよね。
本当にすごいことだと思います。
私は専門家ではないので、相談者さんの抱えてらっしゃるお悩みを選んでいいのかと悩みましたが、文面を読んで選ばないわけにはいかず、何か少しでも気持ちが変わるきっかけになったらと思いました。
だけど、誰に話していいか分からずにここに送ってくださったとのことで、旦那さんにも産婦人科にも言えない状況なのだと思うので、もし可能ならメンタルクリニックなど、相手の反応を気にせずに、今後いつでも相談できるような場所を見つけてもらえたらいいなと思いつつ、おこたえしたいと思います。
と、そんなあくまでも専門家ではない私の意見になりますが、まず、簡単なことではないかもしれませんが、相談者さんの理想とする「美しい」の概念を、少しずつ立体的にしていくことはできないかな?と思いました。
街で痩せている人を見ると、羨ましくて涙が出るとありますが、「美しい=痩せている」の方程式ではなく「美しい」から矢印を引っ張って、色々な要素を書き出してみてほしいなと思いました。
妊娠に限った話ではありませんが、スタイルが良いということを含め、容姿だけが美しいことの基準だとしたら、それは年齢とともに必ず変化していくので、どこかで必ず苦しくなってしまいます。
私の祖母は、86歳で亡くなりましたが、孫の私から見ても、本当に最後まで美しい人でした。
冷えるといけないからと言って大きすぎるパンツを渡された時は、うーん、それはまだいいや…、とは思いましたが、「女の子は、いつだってヒジとカカトはつるつるにしておきなさい」と言ってクリームをたっぷり塗ってくれたこと、「いざという時、誰かに気持ちよく使えるようにお財布には少しだけ多めにお金を入れておきなさい」と言ってポケットに2,000円くらい差し込んでくれるところ、ウォンビンを好きになって韓国語を勉強し始めたこと、自分の亡き後、誰かが揉めることが嫌で、10年かけて死に支度をして、少しずつ形あるものを処分したこと。
最後にお棺に入れてくれと残してあったのは何十年も昔に祖父からもらったというラブレターと、柘植の櫛だけで、弱った身体にこそなっていましたが、亡くなった時も足の爪まで綺麗な桜色のマニキュアが塗ってありました。
1人でラスベガスでカジノをして戦利品を持ち帰ってきたり、船旅での徹夜麻雀で仲良くなった人たちが家に来ていたりと、はちゃめちゃなところもありましたが、ポリシーのある祖母の美学が私は好きでした。
少し話が逸れましたが、人間も時代も、変わりゆくことが前提だからこそ行動できるし、ときめくし、感動するし、美しいのだと思います。
「そんな爺さんみたいなこと言われても…」と思うかもしれませんが、これは諦めではなく、感覚で言うと、目の前にある道を真っ直ぐに見つめている感じです。
だから、「変化」は恐れるものではなく、むしろ自然で、そういった時の流れの中で、どう流れていくか、楽しんでいくか、ということを相談者さんと一緒に想像できたらなと思いました。
だけど、現実を見つめるからと言って、「妊娠は大変喜ばしいことです」とか「赤ちゃんは可愛いものです」という固定観念に自分が合っていなかったとしても、落ち込まなくて大丈夫です。
道はそれぞれに違うので、ゆっくり、自分なりの向き合い方を見つけていってください。
どうか、最低な自分だなんて言って自分を責めないでください。
そしてそれと同時に、理想の状態が明確なのは素敵なことだと思いますが、それ以外が不正解と思うのではなく、常に「今のベスト」を目指すという考えができると少し楽になるかなと思いました。
というのも、これから半年近くある妊婦生活を通して相談者さんの身体はやはりそれなりに変わっていきます。
産後すぐにストイックに体型を戻そうとする方もいますが、それでストレスを感じたり腰を悪くしたりするのも心配です。
100年時代と言われる今、産後の数ヶ月なんて将来振り返ったらあっという間の時間だったりもします。
思春期以来に身体が変わるのを、ちょっと客観的に人類の神秘として見つめながら、今までと同じ、ではなく、出産という一大イベントを終えた後だからこそ見える新しい視点で、その時のベストを見つけられたらいいなと思いました。
私は、パンパンにハリのあった20代前半の身体で履くミニスカートも好きでしたが、しっとり(と言っておきます…)している今の身体で着るロングワンピースも結構好きです。
最後に、いろいろなことをいっぺんに伝えると情報が多いかもしれませんが、体重やスタイルキープ以外で、小さくてもいいから別の成功体験を積んでみてもらえたらいいなと思いました。
キッチンで豆苗を育てるとかそんなことからでもいいのですが、容姿以外での自己表現を少しずつ増やしていくことで、冒頭の「美しい」の立体化と同じで、「自分」が立体化されていくかもしれません。
私もほんの少しだけ学生時代にミスコンとかに挑戦したことがあったのですが、自分の顔写真が校内に大きく張り出されて、学校を歩けば「あ、4番だ」とエントリーナンバーで呼ばれ始めた時は、もう本当に恥ずかしくて、容姿の評価だけがすべてのような気がして、周りの人と比べればいつまで経っても自分だけ丸いし、目も腫れぼったいし、とマイナスばかり目について狂いそうな時がありました。
だけど少しずつ「自分らしい」と思える時間を増やしたり、自分が誰かに対して与えられるものを実感してみたり、それから、好きだと思えるものを言語化できたりするようになるにつれ、「自分」という表現が立体化されて、たとえ格付けされたとしても、点数や数字で表現できない自分だけが知っていることを、自身で肯定してあげられたような気がしました。
相談者さんの魅力はきっと、目で見えること以外にもたくさんあるし、これからいくらでも作っていけます。
ぜひ、相談者さんの考える立体的な美しい自分というものを、じっくり探していってもらえたらいいなと思います。
心から応援しています。
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その名も「深夜の、かけこみ横丁」。
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身近な人にこそ言えない、人の悩みは十人十色。
今日もきっと、誰かが悩んでる。
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気づけば自分のお悩みもスッキリするような1冊です。
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▲悩んだ日に食べたい、横丁のレシピ
悩んだ日でもお腹は空く。
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