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日本だけでなく、世界各地で古くから伝わってきた植物療法。
連載「植物で叶える。現代版おばあちゃんの知恵袋」では、植物療法士であるWeekender編集部代表コラムニスト齊藤 渚さんが、今の暮らしに取り入れやすいフィトテラピーTIPSをお届けしていきます。

この時季、煮込み料理や特別なおもてなし料理に欠かせないキッチンスパイス。

みなさんはどんなスパイスをお持ちですか?

ペッパー、ローリエ、マスタード、サフラン、シナモン、クローブ、カルダモン…
きっと、2つ、3つと色々お持ちの方も多いのではないでしょうか。

そして、その中でよく使うものもあれば、出番が少なく、気づけば賞味期限切れになってしまうものもあるかもしれません。

私自身も「勿体ないな」と思いながら捨ててしまったことが何度かあります。

風味を豊かにするだけでなく、時に医薬品・漢方薬の原料にもなるスパイスは貴重なもの。

身近なフィトテラピー食材です。

戸棚に閉じ込めてしまうことなく、黒胡椒のように、さらっと気軽に使えたらいいですよね。

今回は、「身近だけど使用頻度が低い」4つのスパイスについて、風味の特徴や心身への働きを踏まえながら、簡単レシピをご紹介します。

 

ナツメグ

昔からハンバーグ作りに欠かせないナツメグ。

とはいえ一回に多く使うわけでもないので、なかなか減らないという方が多いかもしれません。

漢方では「ニクズク」といい、健胃薬や母乳の分泌促進の薬などに処方されています。

体を温め、冷えによる腹痛にも便秘・下痢改善にも有効。

ウッディで温かみのある風味で、わずかに渋みがあるナツメグは、料理をちょっとリッチに格上げしてくれます。

肉の臭み消しだけでなく、乳製品やハチミツとも相性がいいので、シチューやヨーグルトに振りかけてみてはいかがでしょう。

ヨーグルトにかけるならハチミツやグラノーラと一緒に。

いつものヨーグルトがデザートのように新鮮な風味に変わります。

その他、ココアやホットワイン、フレンチトーストにもおすすめです。

 

クミン

カレーの風味として親しまれているクミン。

アーユルヴェーダでは消化不良やおなかの張りの解消に良いと言われています。

乾煎りすると風味が増し、エスニックな香りの中に梅しそのような風味を感じることができます。

脂ののった肉や魚、にんじんなどの根菜類、しょうゆや味噌ともマッチ。

おすすめの簡単レシピは、焼きおにぎりです。

だし醤油大さじ2に対して、クミン小さじ1/2~1程度を一晩漬けこみ、おにぎりに塗って焼くだけ。

クミンの香ばしさが広がります。

また、たまごサンドや豚汁のアクセントとしてトッピングするのも◎

 

スターアニス

八角とも呼ばれ、中華・台湾料理の定番スパイス。

わが家ではルーロー飯やチャイ作りに使用しています。

東洋医学では冷え性、腰痛、関節痛、吐き気などの改善、独特な甘い芳香成分には、母乳分泌促進、更年期症状の改善効果があると考えられています。

また、インフルエンザの治療薬「タミフル」の原料となる化学物質シキミ酸が含まれていることでも有名です。

フルーツとも相性が良く、ジャムやコンポートにぴったり。

例えば、桃の缶詰めをシロップごとスターアニスと煮れば、味わい深いコンポートに早変わり。

桃の缶詰め1缶に対し、スターアニス1~2個ほどを少し割り入れ、火にかけます。

沸騰したら弱火で5分ほど煮れば完成。

香りが飛びにくいので角煮やトマト煮込みにもいいですよ。

 

ターメリック

カレーの黄色い色といえば、ターメリック。

ウコンと呼ばれる生薬でもあり、胃痛や腹痛などの痛み、イライラの解消や二日酔いに有効です。

肝臓など内臓の働きをサポートして、アルコールや脂質の代謝を促すので、お酒や肉が好きな方、外食が多い方におすすめです。

良い意味で土っぽい香りで、味噌やマヨネーズとも好相性。

ホットミルクにかけるのも簡単な取り入れ方です。

ホットミルクを飲む際は、よくかき混ぜてからお召し上がりください。

入れ過ぎなければ、比較的まろやかな風味なので、おでんの煮汁や餃子の餡にちょい足しする、サフランライスの代わりにターメリックライスにするなど、アレンジがしやすいですよ。

 

スパイスの豊かな香味は、植物が身を守り繁殖するために作り出した化学物質。

これらは食のクリエイティビティのみならず、健やかな心身のための力を与えてくれます。

ハーブやアロマも良いですが、まずは一番身近なキッチンからスパイスを取り出してみましょう。

1年半続けてきたコラムは、今回をもって最終回となります。

全18回、毎月「保健だより」をお送りするように書かせていただきましたが、いかがだったでしょうか。

▼これまでの記事はこちらから
植物で叶える。現代版おばあちゃんの知恵袋

植物の知恵は普遍的。

コラムは残りますので、ふと気になった時に読み返してみてください。

またInstagramでは引き続き、暮らしの中のフィトテラピーについて投稿していきます。

のぞいていただけたらうれしいです。

ありがとうございました!

 

<参考文献>
「アーユルヴェーダ・カフェ」上馬塲和夫(地球丸)
「クミン料理の発想と組み立て」日沼紀子(誠文堂新光社)
「心とカラダにやさしい316種 増補改訂 ハーブ&スパイス辞典」伊藤進吾,シャンカール・ノグチ監修(誠文堂新光社)
「スパイスのまほう」印度カリー子(秀和システム)
「スパイスの科学大図鑑」スチュアート・ファリモンド著/辻静雄料理教育研所監修(誠文堂新光社)
「薬膳と漢方の食材小辞典」東邦大学医学部東洋医学研究室(日本文芸社)

 

Editor:Tomomi Watanabe , ふじのあやこ

 

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