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(2023年11月追記)
本記事に登場するサービス名は一部、2024年度サービス提供分より名称変更をいたしました。
変更前「THE FAMILY NOTE」→ 変更後「KAZOKUGOTO NOTE(かぞくごとノート)」
変更前「FAMILY NOTE CLUB(FNC)」→ 変更後「KAZOKUGOTO NOTE CLUB(KNC)」
この3年間でユーザーの皆様と育ててきた「ファミノ」という愛称は、これからも大切にしていきたいと思っています。
詳細はこちらから

2021年春に誕生した「THE FAMILY NOTE」(通称「ファミノ」)。

1冊のノートを家族とともに書くことによって、お互いに向き合い、物理的な距離だけでなく、精神的な距離も近い存在になることを目指すNEXTWEEKEND自社プロジェクトです。

わたしたちの提案に共鳴してくださった方のもとに届けられたファミノは、家族のコミュニケーションツールとして活用いただき、この世に1冊しかない“◯◯家の本”が次々と生まれています。

ありがたいことに「今年こそわたしもやってみたい」、「ファミノがなくなると困る(!)」などのお声をいただき、翌年には2022年度版をリリース。

そして2022年12月にも2023年度版の受注販売を予定しています。

 

ファミノの特徴のひとつは、使い方の自由度が高いということ。

家族のコミュニケーションを促し、内に秘めた想いを引き出せるように、ゆるやかにテーマや質問を設けていますが、書く内容も書き方も使う方にゆだねられているので、家族ごとに“ちょうどいい形”ができあがっていきます。

この連載【あの人のファミノ事情】では、それぞれのおうちでファミノがどんなふうに使われているかとともに、使っていくうちに家族内でどんな変化が訪れたかをお届けします。

 

第1回は、NEXTWEEKEND代表・村上萌のファミノ事情を初回拡大版でお送りします。

ユーザーとしての感想とともに、ファミノの企画者としての思いも聞かせてもらいました。
(NEXTWEEKENDの中の人ではありますが、この取材記事では以下「萌さん」と呼ばせていただきます。)

 

File 01 村上萌(NEXTWEEKEND代表)

家族構成:
夫の都倉賢さんと5歳の娘・杏ちゃんとの3人暮らし

ファミノで叶えたいこと:
幼い娘の「今」や、転勤の多い夫との日常を記録したい、離れて暮らす親の直筆を残したい

使用プラン:
ベーシックプラン+ふうふで使うノートプラン+親と使う別冊プラン

 

“ファミノ始め”は「Year Map」から

真っ白なページにペンを入れる。

ちょっと緊張するけれど、これから始めるファミノに向けての希望や期待がふくらむ、いちばんわくわくする瞬間ではないでしょうか?

萌さんが最初に書いたページは、「Year Map」。

ちょうどノートが届いた頃に長崎県で新生活を始めた、萌さん一家。

家族会議を開き、これからの予定をイメージしながら毎月のテーマを話し合ってみたのだそう。

 

萌さん:「NEXTWEEKENDのコラムでも毎月のテーマを提案していますが、季節を楽しむうえでも、日常にメリハリをつけるうえでも、月ごとにテーマを決めるのは大切だと感じていたので。いきなり家族の本音や感情を聞き出すのはハードルが高いという方でも、とっかかりにしやすいのがこのページかもしれません。『10月には運動会があって、3月にはおじいちゃんのお誕生日があるよね』とか、予定を軸にすると、どんなふうに過ごしたいかも自然に話し合えますよね。」

▲萌さん曰く“松岡修造さんタイプ”の賢さんも、楽しんで「Year Map」を書いてくれたとか。

 

萌さん:「夫は“挑戦する”みたいにしっかりと目標を立てるのが得意なんです。でも、もっとカジュアルに考えてもいいのかなと思って、私は“(長崎を)好きになる”というワードを提案したりしました。」

萌さんはこの「Year Map」を、これから先の時間や大切な日について建設的に話し合うきっかけにしてほしいと言います。

萌さん:「ときどき『結婚記念日を忘れられていてショック』なんて話を聞くのですが、自分からは何も言わずに相手を試して、結果さみしい思いをするのはもったいない気がするんですよね。事前にこの日は記念日だね、こんなことをしたいねって話す機会があれば、パートナーの気持ちを知ることも、予定を合わせることもできますよね。」

 

感情が生々しいうちに、残す

手帳と違い日付が入っていないファミノは、いつ、どのタイミングで書いてもOK。

筆マメなタイプでもないし、定期的に書いているわけじゃないという萌さん、「半月くらい期間が空くことだって全然ありますけど、誤差の範囲です」と笑います。

では、どんなときに書くのかと言うと「残したいと思うとき!」ときっぱり。

 

萌さん:「あるユーザーさんが『Good Things journal』のページを“特集”と表現していて、すごく腑に落ちたんです。たとえば旅行でたくさんのインプットがあって、しばらくは余韻にひたっていたとしても、アウトプットしないと次の記憶で上書きされてしまうんですよね。感動や感情が生々しいうちに、雑誌の特集を組むような感覚でぎゅっとまとめてみると、すごく記憶に残るんです。感情は生ものなので、きれいに書くことよりも残すことを大事にしたいです。」

▲2022年の5月に杏ちゃんと行った沖縄旅行の記録。「娘がいっぱいおしゃべりしてくれたことも時がたつと記憶からこぼれてしまうから、忘れないうちに書き残しています。」

 

ありふれた日常こそ、記録したい

萌さんはこの“残す”ということを、旅のような非日常的なことだけでなく、ふだんの生活でも意識しているのだそう。

 

萌さん:「つい、いざというときのためにとっておこう、って考えがちなんですけど、1年に1回総まとめをするだけだと、忘れてしまうこともきっとあると思うんです。どうせ何かに書くならファミノに書こうくらいの気持ちで、ちょっと感情が動いたら書いてみるのもいいな、って。今まではチラシの裏に書いて捨てていたようなことをノートにちゃんと残したら、ありふれた1日が宝物になるような気がするんです。」

▲「この前、会話の流れで夫にシャンプーハットのイラスト描いてってムチャぶりしたら、すごく上手に描いてくれてびっくりしたんです」と笑う萌さん。こんな他愛のない日常のワンシーンこそ、後で見返したときに愛おしく思えるのかもしれません。

 

使い方はどんどんアレンジしてOK

ファミノを長期間使っていると、よく書くページと、たまに書くページに分かれてくる、なんて声も。

そのあたり、萌さんはどうなのでしょうか…?

 

萌さん:「うちの会社の定例会議では、毎週感謝したことをスタッフ同士で伝え合う機会を設けているんです。同じようなことが家族間でもできるといいな、と思って『Thank you for』のページをつくったんですが、我が家は私も夫も仕事のスケジュールがイレギュラーで、そういう機会をルーティーン化するのが難しくて…。」

そこでページを余らせてしまうよりも、自分流にアレンジしてどんどん使うことにした萌さん。たとえば、こんなアイデアが。

萌さん:「よく、民宿とかに宿泊客が自由に書けるノートが置いてあったりしますよね。その発想で、長崎の我が家まで遊びに来てくれた人に、メッセージを書き残してもらっているんです。ページの裏には、その日がどんな集まりだったのかを書き残しています。」

▲「これは両親や親戚が来てくれたときに書いてもらったメッセージなんですが、仕事や健康、受験などいろいろな事情があるから、このメンバーで長崎に来られるのは最初で最後かもしれない。だからこそ、こうやって形に残せてよかったな、と思うんです。」

 

さらに、家族内のコミュニケーションで、このページが活躍することも。

萌さん:「この前、出張から帰ってもなかなかスーツケースをかたづけられなくて、自分が悪いと思っているのに、あやまれなかったんです。それで『Thank you for』の場を借りて怒らないでくれてありがとうと伝えたら、夫も『スーツケースが出しっぱなしの自覚はあったんだね(笑)』って。口で言うと素直にあやまれなかったり、無駄に攻撃的になってしまうことも、書いてみるといい感じに伝えられることってありますよね。」

▲「パートナーや家族に言いたいことがうまく伝えられない人は、自分のコメントを先に書いて、ペンと一緒に机に置いておくといいかも。WISH LISTを書いて冷蔵庫に貼っておいたらご主人がほしいものを買ってきてくれた、なんて話もユーザーさんから聞きました。」

 

ファミノを通して受けつぎたい想い

萌さんから出てくる、数々のエピソード。ファミノが生活の一部になっている様子が伺えます。

自分ひとりで書く分にはスムーズにできても、家族一緒に取り組むのが難しいというお悩みも聞きますが、萌さんに秘訣を聞いてみると「そのへんに置いておくことかな…?」と、意外にもシンプルな答えが。

 

萌さん:「うちは夜ごはんのあとに、家族でアイスを食べながらデカフェのコーヒーを飲む“チルタイム”があるんですが(笑)、そこにファミノが置いてあったりすると、みんな雑誌を読むくらいの感覚で眺めていたりしますね。」

そう、ファミノは書くだけでなく、読み返す楽しみもあります。萌さんは自らの経験から、読むことで伝わるものがたくさんあるはず、と言います。

萌さん:「私の母は、“思い出ボックス”というものをつくっていて、父とのデートで着た服のコーディネートの記録だったり、ホームパーティの計画メモだったり、いろんなものを残してくれていたんです。私はそれらを幼い頃から今まで何度も見返していて、実際に書かれていたレシピをつくってみたりしていたんです。」

そういう記録を読むのが本当に楽しかったから、娘にも伝えていきたいと思うのかもしれませんね、と話す萌さん。自分でもおうちイベントのメモや記録をファミノに残しているそうです。

萌さん:「娘が20歳になったときにこれを見返したらすごく懐かしいはずだし、お母さんがどんな気持ちで準備していたか、知ってもらえたらいいなって思うんです。」

▲その日つくったメニューや演出のメモetc…。おうちで開いた、家族の誕生日パーティを記録したページ。今までカードで贈り合っていたお祝いのメッセージも、ファミノに書くことにしたら保管しやすくなり、杏ちゃんは何度も読み返しているのだそう。あたたかな思い出とともに、家族を愛おしく大切に想う気持ちも受けつがれていくのかもしれません。

 

ファミノを書く時間がはかどる、
私のコツ

「きちんと」、「定期的に」ノートを書く時間を設けるよりも、おっくうに感じる要因をなくして、気が向いたらすぐに書けるように環境を整えるのが、萌さんのコツ。

1.思い立ったらすぐに書ける場所に
「とにかく手に取りやすい場所に置いておくことが大事。さらに、書こうと思ってから道具を出して…となると面倒になってしまうので、私はファミノに使うもの一式をノートの近くに置いています。」

2.思い出の写真をプリント
「写真を貼ると楽しいページになるので、プリントしておくといいですよ。私はシールプリントできる用紙を買ってCanon PIXUSで印刷しているのと、旅先などにはスマホで撮った写真をシールにできるミニフォトプリンター『iNSPiC』を愛用しています。」

3.ファミノに残したいことをボックスにin
「これはファミノに記録したい!と思ったものをとりあえず入れておくボックスをつくったんです。すぐに書く時間を取れない場合でも、ここに材料を入れておけば、思い立ったときにまとめられます。」

▲萌さん愛用のファミノ道具。左からプリントした写真、リング穴を補強するためのシール、クレヨン、iNSPiC、カラーペン。「iNSPiCは小さいから旅先にも持っていけるし、気軽にプリントできるから後回しにならないんです。」

 

▲ファミノに残したいものを収納しているボックス。「発表会のしおりや旅のパンフレット、チケット、メモなどはバラバラになりやすいですし、あとから探すと大変なのでひとまとめにしています」

 

明日、自分の身に何かあっても、残せるものをつくりたい

村上家で伝えられてきた習慣や考え方、暮らしを楽しむコツなどを、お母さんと共著で『受けつぎごと。』(サンマーク出版)という本にまとめた萌さん。

それを読んで、お母さんの同級生が「自分もそんなふうに受け継げる機会があればいいなあ…」とうらやましがってくれたことが、ファミノの企画に繋がったのだと言います。

 

萌さん:「誰にでも、受けついできたことや受けついでほしいことってあるんじゃないかなと感じて、みんなが『一家に一冊、秘伝の書』をつくるというイメージで、ファミノを企画したんです。」

“受けつぐ”は、萌さんがファミノを書くうえで強く意識しているテーマ。大人になった杏ちゃんや60歳になった自分が読み返したときにうれしいことをイメージしながら綴っているのだと言います。

萌さん:「明日、自分の身に何かあったとして、残せるものが銀行の暗証番号だけじゃないと思えたら心強くありませんか?考えてきたことや大事にしてきたことがきちんと形として家にあるのって、実はすごく安心することだと思います。」

▲萌さんが大切にしていることばやそこに込められた思いを杏ちゃんに伝えるために、お風呂タイムに開催している「ことばきょうしつ」の記録。このページは、杏ちゃんが今読めるようにひらがなで記載。

 

20年後には、すべてがかけがえのない思い出

海外で起業してずっと単身赴任していた萌さんのお父さんは、たまに帰国するたびに「この前までこんなに小さかったのに」と嘆いていたそう。

その姿は萌さんに、「子どもが小さい頃というのはこんなにも尊いものなんだ」と強い印象を残しました。

 

萌さん:「だから自分に家族ができても、この場面を残したいと俯瞰して考える癖があるのかもしれませんね。娘に手がかかったときも、『この時間は20年後にはお金を出してでも戻りたいと思える、大切な思い出になるはず』ってすぐに脳内タイムスリップできるから、気持ちがすーっと収まったりして。」

俯瞰とは、鳥が空から地上を見下ろすように広い視野を持って物事を見ること。

今、うまく俯瞰できなくても、整理して書くうちに身につくかもしれませんね、と萌さん。

萌さん:「人に読まれることを前提としていない日記や手帳には、混沌とした思いを書いてもいいと思うんですけど、それを人に見せたくはないですよね。ファミノは将来誰かが見ること、誰かに残すことを意識してつくるもの。出来事や感じたことをいったん整理して編集する作業を通して、自然に俯瞰できるようになる気がします。」

▲「娘もファミノはいつか読み返すものだと理解しているので、最近は未来の自分に向けて『お姉ちゃん杏ちゃんへ』という手紙を書いていました。」

 

萌さん一家がファミノを使い始めて1年半、家族の関係もゆるやかに変わってきたそう。

萌さん:「だんらんのときにこのノートがあることで、将来の話がしやすくなったように感じます。前はただの会話で終わっていたけれど、ノートがあることで一緒に考えて予定に変えられるようになったり。ノートを通じて共通言語が増えて、家族のチーム感もよりいっそう強まったと思います。」

萌さんだけでなく、今では家族にとってもノートのある暮らしがあたりまえに。

萌さん:「ファミノを使い始めたころは色を塗るだけだった娘も、最近は文字や絵を書けるようになって。最初は記者会見みたいな硬い文章を書いていた夫も、日常的にノートを読み返す私や娘の姿を見ているうちに、気楽に書けるようになりました。笑」

萌さん:「記憶には長期記憶と短期記憶があり、感情と結びついている出来事ほど長期的に覚えていられるという話を聞いたことがあって。ひとつひとつの情景に対して自分がどう感じているか自覚している人ほど、その気持ちを覚えていられるのかな、と思うんです。ファミノにそのときに感じたことも含めて記録することで、感じる力が鍛えられるし、思い出に深みがぐっと増した気がしています。」

 

バラエティ豊かなページから見えてくるのは、“特別な日常”。

イベントの日はもちろん、何気ない日でも、家族で笑いあったこと、子供の成長を実感したこと、お母さんからかけられた言葉etc… 1日として同じ日はないのだと感じます。

道端で摘んだ花は、そのままにしておけば枯れてしまうけれど、押し花にして額装すれば、在りし日の美しさを留めてくれます。

小さなことでも心が動いたその瞬間をほうっておかず、ノートに書き留めていくことで、そのときの気持ちまで色鮮やかなまま残すことができるのかもしれません。

それはどんな財産よりも、未来の自分たちにとって価値のあるものになるはずです。

 

Writer:野田りえ
Editor:Saki Goda

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