「子どもの成長と共に、おもちゃがどんどん増えていく」
「梅雨や猛暑の日、おうち時間が増えるこれからの季節をどう過ごそう」
育児中の方の中には、なんとなく過ごしている子どもとの時間や遊びに、しっくりきていない方も少なくないのではないでしょうか。
アートを取り入れた暮らしの様子をSNSで発信している、アートディレクターの吉田ちかげさん。
7歳の息子さんがおうちで自由に創作活動をする日常には、純粋な子どもの感性を生かしながら、毎日を楽しく過ごすヒントがたくさん詰まっています。
吉田ちかげさん:
「おうちアートの良い点は、“家が楽しい場所になる”こと。一番安心できて、自分を思いっきり表現できる場所=おうちになれば、親も子も言うことないですよね。子どもたちには、動画やゲームなどの作られたコンテンツやおもちゃを“消費する喜び”よりも先に、自分の手で“創造する喜び”をたくさん感じて欲しいという考えが、私のベースにあります。子どもは紙一枚、輪ゴム一つからでも遊びを見つけていく。その可能性を、大人があれこれものを与えることで、狭めたくないなと思っています。知識よりも知恵。これからの時代には、“楽しいことは自分で創ろう!”というマインドを育んでいくことが大切だと思っています」
些細なことに面白みを見つけたり、能動的に体や心を動かして想像力を膨らましたり、遊び方を模索したりと、豊かな感性を育めるのが「アート」の醍醐味。
おうちアートの達人・吉田さんに、日常的に子どもと創作を楽しむコツを、たっぷり教えてもらいました。
アートディレクター。「好奇心の目をみがく」をテーマにアートスクールの運営などを手がけるクリエイティブコミュニティ『あそびとデザイン』主宰。7歳男の子のママ。
あそびとデザイン:公式サイト Instagram
子どもと、おうちでアートを楽しむ秘訣
その1 子どもが自由に遊べる環境を作る
その2 親が教えすぎない
その3 大人も子どもと一緒に楽しむ
アートを楽しむ準備として、「子どもが自由に遊べる環境を作る」こと。
おうちでアートというと、「片付けが大変そう」「絵の具がついた筆を振り回して家が汚れるのでは」と躊躇してしまう方も少なくないはず。
「部屋が汚れても水浸しになっても、子どもにとっては散らかしているわけではなく表現をしている時間なんです。なので“部屋が汚れても怒らない”を心掛けています」と吉田さん。
「だめだめ」と言いそうな行為を「いいよ」と言えるように。
“ここが遊ぶ場所”と子どもにも視覚的に分かる工夫を、吉田さん自身もしているそうです。
吉田さん:
「我が家では“お豆のテーブル”と呼んでいる小さな机と椅子があり、そこの上では粘土をしたりペイントしたりと、息子が好きに創作活動できる場所にしています。自分が自由にできるスペースがあると、子どもは喜ぶんですよね。とはいえ、家のソファや床は絵の具の跡だらけ(笑)。汚れないようにしたいなら、床にピクニック気分でレジャーシートを敷いたり、テラスなどの屋外に大きな模造紙を広げて絵を描いたりするのもおすすめ。汚れない工夫に“非日常感”をプラスしてあげると、さらに子どもが創作を楽しめる気がします」
そして、「親が教えすぎない」こともポイント。
初めて使う道具の基本的な使い方をみせたとしても、「絵が上手く描ける方法、などは教えないようにしています。手取り足取り指導しちゃうと、子どもは途端につまんなくなっちゃうんですよね。私の幼い頃もそうでした」と吉田さん。
「こうするものだ」という既成概念を外してみると、子どもが自分なりに考え、発想し、工夫することで、その子なりの“世界”が見えてくるもの。
吉田さん:
「うちの息子の今一番の興味の対象が、深海生物。雨の日には、窓に描けるクレヨンで深海魚を窓いっぱいに描いて、深い海の中を思うままに表現しています。子どもの“好き”を発見したら、一緒に図書館に行って関連本を借りてきて、また創作して…。その過程でも、大人が思ってもみなかった方向に子どもは進んでいくので、毎日が新鮮で驚きの連続。子どもから教わることの方が多いですね」
自分の「こうしたい!」に目を輝かせている姿に、子どもの興味や関心のヒントを見つけたら、それをさりげなく深めるサポート役くらいの寄り添い方がちょうどいいのかもしれません。
そして、おうちアートを楽しむ上で、最も大切なのは「大人も子どもと一緒に楽しむ」こと。
五感をフルに働かせて、表現する面白さを親子で共有できたら、何気ない日常がいっそう宝物のような時間になるはず。
また、完成した作品によって、豊かなコミュニケーションにも繋がります。
吉田さん:
「とにかくたくさん褒めるように心がけています。息子の作っている姿や作品を横で見ては、“天才!”が口癖になるくらい(笑)。完成したものは、ぜひおうちに飾ってほしいですね。誰でも、自分の手から生まれた何かを気に入ってくれたら誇らしいもの。自然と、子どもの自己肯定感も高まると思います」
身近な材料ですぐできる!
おすすめのアートアイデア3選
今回は、アート初心者や小さいお子さんでも、簡単にトライできるアイデアをご紹介します。
これが正解!という形はないので、自分の感性にしたがって手を動かしながら、自由にどんどんアレンジを。
作った後は、愛らしいインテリアとして目で見ても楽しめます。
使う材料は100円ショップなどで手に入ります。
IDEA1 おうちの窓をステンドグラスに変身
カラーセロハンをぺたぺたするだけの窓アート。
いろいろな大きさや形に切って模様を作ってみたり、色と色を重ねて変化を楽しんだり、セロハン越しの外の世界を観察したり…。
そして、ステンドグラスは太陽と仲良し。
外からの光を透かしてできた影で、おうちの床がキラキラ!
のりやテープは使わず、くり返し貼って剥がせるセロハンは、部屋も汚れないので安心して使えます。
・カラーセロハン
・はさみ
・霧吹き(もしくは濡れた布巾など)
作り方
1. カラーセロハンを好きな形に切る。
2. 霧吹きや濡れた布巾で窓を湿らす。
3. カラーセロハンを窓にくっつける。
IDEA2 粘土でオリジナルの花を咲かせよう
丸めた粘土を花や実に見立てて、枝にちょこんとくっつけるだけ。
ピンク色の粘土で梅の木にしたら、春分やお雛祭りのシーズンの盛り上げ役になります。
色とりどりの粘土で、空想の世界のオリジナルの木を作ったり、色紙で作った葉っぱや花を挿したりと、素材や色も自分流にアレンジを。
お部屋がふわぁと明るくなる、インテリアとしても可愛いおうち遊びです。
材料
・枝(太さや強度があると良し)
・軽量粘土
作り方
小さくちぎった粘土を、木の枝先に丸めてくっつける。
サイズは大小あると可愛い!
IDEA3 古布をペイントしてカラフルな布づくり
画用紙ではなく、普段と異なる布素材や大きさに思いっきりペイントできると、子どものテンションがぐっと上がるもの。
小さい子にとっては体全体を使う面白さもあり、親子でのはじめてのアートにおすすめです。
ペイントした布の使い道は無限大。両端をつなげて筒状にして大きな目を描き、オリジナルの鯉のぼりにするのも手。
支柱を組み合わせてティピーテント風に仕上げたら、秘密基地のようなワクワクするおこもりエリアづくりが叶います。
材料
・古布(シーツ、バスタオルなど)
・絵の具
・筆、パレットなど
わが家が何より楽しい! 最高の場所に
吉田さん:
「私は友人の新居祝いに、よく絵をプレゼントするんです。それもキャンバスと画材を一式持っていって、友人の子どもたちに好奇心のままにその場で描いてもらう。家族のスペシャルな記憶として残ると思うので、喜んでもらえていたら嬉しいですね」
吉田さんが語るなんとも素敵なエピソードは、いわば、出張版のおうちアート。
「おうちだけじゃなく、近所の公園に遊びに行く時に、紙パレット(日めくりカレンダーのように一枚ずつ使える、使い捨てパレット)を持っていって絵を描いてもいいですよね。いつもの遊びの場でも、可能性が広がります」と、次々とアイデアが。
「でも、ちょっぴり困ったこともあるんです。紙と絵具さえあれば何時間でもおうちで遊べちゃうようになった息子。それは嬉しいのですが、おうちが好きすぎるあまり、家族でお出かけしたい時も外出したがらなくなってしまいました(笑)」
日常的にアートを取り入れ、アートを遊びの選択肢の一つにできたら、家族と過ごす時間やつながりは、さらに濃密なものに。
そして、何かを自分で作る喜びは、子どもはもちろん、大人にとっても人生を豊かにする手がかりになりそうです。
まずは、次の週末。
おうちに籠もって親子で一緒に何かを作ってみませんか。
Text : Hitomi Takahashi
Photo : Chikage Yoshida
Edit : Tomomi Watanabe