ひとりで法人を設立した頃、表参道のシェアオフィスの一室を借りた。
当時24歳、限られた予算の中で色々な楽しい要素を詰め込んで家具を集めた。
個人法人のようなものだった私にとっては表参道に拠点があるだけで十分で、物もたいしてなかったので、ずいぶん贅沢に使っていたと思う。
そんな私に覚悟がうまれ、ある春の日当時インターン生だった4名の若い仲間たちを一気に社員にした。
そうしたら、途端に物が増えて部室のようになった。
就職したことのない私が代表を務め、学校を卒業したばかりのメンバーが新入社員となった新しい会社は、とにかくがむしゃらだった。
「NEXTWEEKENDと言っているくらいだから、毎週末イベントをやろう!」なんて誰かが言い出せば、その週末から休むことなくイベントを開催したし、イベントをするたびに物はどんどん増え続けた。
搬入業者に頼むということも知らずに、全部自分たちで作って運んだ。
新卒が入ってくれたから入社式をしないと!なんて気持ちで企画した“入社式NIGHT”には、「想い出がいっぱいとか歌ってもらえたらいいですよね」という社員の一言で、無謀にも面識のない元H2Oのなかざわ けんじさんに熱いメールを送り、サプライズで来ていただいたこともあった。
今この時期のことを思い返しても、ベンチャーとかそういう呼び方よりは、青春と表現した方がしっくりくる気がする。
仲間が少しずつ増えて、同じシェアオフィス内で大きめの部屋に移動した。
何か作業する時には、誰に頼まれなくとも全員用に作ったオーバーオールを着ていた。
お世話になっている人を招待して、狭い部屋でパーティーなんかもした。
そして、「やっぱり、NEXTWEEKENDを好きでいてくれる人が来ることのできる場所で働きたい!」「もっと自分たちの家のような場所を作りたい!」「そのためには、ビルの中の一室ではないのかもしれない!」という思いが自然と強くなり、路面でオフィスを探すことにした。
当時5年前の私は妊娠が分かった直後で、なんだかとても焦っていたこともあり、とにかく一人で毎日好きなエリアを沢山歩いて、物件を見て回った。
そして出会ったのが、今のオフィスがある外苑前だった。
早速、引越し当初はなかった窓を作り、(取り壊されることが決まってからずっと保管していた)祖母の家の建具である扉を取り付けた。
カウンターをつけて、テントをつけた。
そして、(当時の価値観だと)毎日社員が出社する場所であるオフィスの景色を、ちょっとでも楽しくしたいと、植栽を植えた。
5年経った今、特に今月に入ってから弊社は真っ白なモッコウバラに包まれていて、毎日本当に沢山の人がお花見がてらコーヒーを飲みに来てくれている。
こうしてたまに振り返ると当時の思い出が溢れてくるのに、普段は“今”に生きているから、人間の記憶はどんどんアップデートされていってしまう。
今は遠くに住んでいる人も、二人のママになった人も、みんなすっかり“それ”として生きているけど、確かに一緒に道を歩いてきた。
そんな時に辿ってきた時間をちゃんと教えてくれる、植物の存在。
今この美しいモッコウバラが待ち構えていてくれるのは、あのがむしゃらに備品を持って走り回った時期があるからで、こうして少しずつ植物が成長していく過程を、一つの場所でみんなで見守ることができていることだって、当たり前ではないということに改めて気づく。
あの時オーバーオールを着ていた人たちが育休をとって会社に赤ちゃんを連れて遊びに来ていたりなんかするのは、本当に幸せなことだなと思う。
弊社はそれでも制度的にはフルリモート、フルフレックス。
ルールで縛るよりも、みんなが「行きたい」と思うオフィスにする方が本質的だと思って、あの時決めた場所で、今こうしてモッコウバラが時間の流れを教えてくれる。
NEXTWEEKENDが今月掲げている月間テーマは「楽しい気持ちは自分で作る」。
ハッシュタグは #心おどる日 。
3つのWISHLISTはこれ。
・気持ちを動かすアイテムを身につけたい
・自分なりの“大胆”に挑戦したい
・日常の景色を楽しくしたい
今回は2つ目の「日常の景色を楽しくしたい」についてコラムを書いてみました。
10年間で3度オフィスを引っ越したけれど、どれも“もう少し目の前の景色を楽くするためには”と追及して、出会ってきた場所だった。
物理的な場所を守るというのは、時代に反しているのかもしれないけれど、効率にとらわれず景色を楽しくすることに改めて貪欲になりたいと確信させてくれた、モッコウバラの季節でした。
引き続き #心おどる日 の多い5月になりますように!