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大きな声では言いづらいちょっとした悩みや、あえて近い存在のひとには話しにくい悩みは誰にでもあるもの…。

この連載では、みなさまから匿名で募集したお悩みに、NEXTWEEKEND編集長 村上萌が答えていきます。

今日ご紹介するのは、お母様のご病気が発覚した相談者さんからのお悩みです。

萌さんこんにちは。
萌さんの存在を知ってから3~4年が経ちました。(遅くてすみません。。)
いつも楽しくNEXTWEEKEND、そして萌さんの発信する情報を拝見させてもらっています!
早速ですが相談です。
つい先日、母親が肺癌になりました。
ステージⅣで進行型の癌、そして転移もあり一刻も早く治療をした方がいいと、即入院、治療を開始しました。
1ヶ月前までは普通に生活をしていたので、突然、母に命の期限がつけられた事に心の整理がつきません。
1番の心配は母親です。
コロナで面会ができませんが、なんとかサポートしてあげたい。
母親が生きる事に全力で寄り添ってあげたい思っています。
でも、それと同じくらい、自分の気持ちに整理をつけられないことが心配です。
今は心の波が激しく、母親のいない世界のこと、今までの楽しかった思い出、家族(父親、妹)の現状…
色んなことが頭を巡り、突然涙が出たり、呼吸が苦しくなったりします。
萌さんのお母様も重病を患ったと拝見しました。
その時、どのようにお母様をサポートされましたか?
また、自分の心のケアをどのようにしましたか?
今後の参考に、ぜひ教えてください。
余談ですが、自分のメンタルケアでできることを考えて、まずは知人や友人に現状を話し、たまに話を聞いてほしいと、不安を分散させる環境を整えてます!
(34歳・女性・会社員)

10年近く2拠点生活をしていますが、娘が生まれてからの数年は移動時間が修行のようでパソコンなんて触れもしませんでしたが、今日は久々に新幹線で記事を書いています。

隣で静かに遊んでいる娘の成長が嬉し切ない気持ち…。

そして、大切な気持ちを綴ったお悩み、お送りいただきありがとうございます。

今まで健康的な方だったらなおさら、お母さんの病気というのは、自分の中で絶対的な何かが崩れてしまうような気持ちになり、心の中心から不安定になりますよね…。

小さい子どもが、お母さんに注意されるかな?と思いながらもいたずらをして、注意されない時に「え?あれ?これって、いいの?」と思ってしまうように、私はいい大人になってからも、母をどこかで防波堤のように思っていて、仕事での選択や、選ぶ洋服ですらも、母が見ているうえで何も言わないから悪くはないのだろう、と思っていたんだ…、ということに、母が入院して、ものすごい孤独を感じて初めて気づいたりしました。

物理的には離れていたとしても、「親」という漢字の通り、きっと木のかげから見てくれているだろうと思ってしまうのが、親の存在なのかもしれないですね。

(自分が親になって初めて、その距離感はどうやって築いていくんだろうなんて考えたりもしますが)

だから相談者さんが、お母さんのことを心配するのと同じくらい、ご自身の前に突然暗闇が広がってしまった現状も、ものすごく共感します…。

私の話をすると、母も血液の癌で急性骨髄性白血病というものでした。

アゴ付近が腫れているので虫歯だと思って歯医者に行ったところ、様子がおかしいから内科を勧められ、数日のうちに血液検査を経てその場で白血病の可能性を言い渡され、即日入院となりました。

その時点で血液の8割以上が異常な数値だったようです。

電話を受けて翌日には北海道から駆けつけましたが、歯の治療をするくらいの心持ちで母が留守にした実家は、作りかけのおかずや、誰かに用意していたプレゼントなんかで溢れていて、これから来る新しい季節を楽しみ尽くそうと、家中が夏仕様に模様替えされたばかりの、希望に満ち溢れた、とにかく楽しい場所でした。

あっという間に20kgも痩せて(蓄えがあったのは唯一良かったことです…)、大好きな花を飾ることも許されない無菌室の中での長い闘病生活は、季節の変化はもちろん、時間の経過という概念もありませんでした。

病院に到着して母の病室に入るために、全身を消毒してから防護用のガウンに着替えている間も家に帰ってからも、父と弟と私が会話することもほとんどなく、どれだけ母ありきで成り立っていた家族だったんだろう…、と思い知りました。

再発を繰り返し、何度も絶望して過ごした数年でしたが、闘病する本人にとって何よりも大事なのは間違いなく”希望”だと思います。

母の病気が分かってすぐ、父から「いいか、俺らは看病するんじゃない。必ずママを治すんだ。そのためのチーム体制を組むからよく聞け」といった具合に、隊長からの指令のように方針が発表され、私と弟、それから親戚にも協力してもらって、みんなで同じ目標に向けてグループLINEを作りシフトを決めました。

父に宣言されると、弱気でいたことを自覚し、本当は誰よりも不安で心細いはずの父が考えたベストを、一緒に遂行したいと思いました。

退院したら何をして、どこに行って、と、とにかく当たり前に未来の話をして、それでいて私は、母に変わらず、北海道での生活のことや出会い、仕事での新しい挑戦の話をし続けました。

閉ざされた生活の中で、「今日~さんがね」と、一緒にそれを経験しているように話をすると、母も笑ったり驚いたりドキドキしたり、自分が果てしなく遠い非日常の中で暮らしていることを少しだけ忘れられて、「じゃあ、次は~するの?」と未来の話をして、元気でいられたようです。

とにかく食欲がなくほとんど病院食を食べない母が、小さな声で「焼きたてのクレープって美味しかったなぁ」なんて言うと、その日の夕方には弟が焼きたてのクレープを魔法瓶に詰めて持って行ったりもしていました。(しかもバターを別添えで持って行き、現場で溶かすところを披露するというシェフのような…)

無理難題を掲げる、かぐや姫みたい!なんて言いながら家族で母を笑わせようとしていましたが、その時は「~たい」という希望形で終わる言葉をどれだけ引き出せるか、ということをものすごく大切にしていました。

父は、気づけば検査結果について医師の説明なしに分かるほどに詳しくなっていましたが、やはり母自身が希望を持ってくれていたことがすべての中心にありました。

相談者さん、コロナ禍で面会ができないのは本当に辛いですよね…。

だけど、とんでもないことになったな…、と、思いつつも、おそらく冷静に自分の運命を受け入れようとしているお母様の希望となるものは、家族が見ている景色だと思います。

ステージⅣで進行型、と状況を文字にすると本当に恐怖で押しつぶされそうになると思いますが、まずはご家族で方針を決め、同じ場所に立って、一緒の景色を見ながら病気と闘ってさしあげられると、お母様はとても心強いと思います。

家族にとって、新しい絆が生まれる時間となるよう心から応援しています。

 

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