大きな声では言いづらいちょっとした悩みや、あえて近い存在のひとには話しにくい悩みは誰にでもあるもの…。
この連載では、みなさまから匿名で募集したお悩みに、NEXTWEEKEND編集長 村上萌が答えていきます。
今日ご紹介するのは、ハタチの女子大生の相談者さんからのお悩みです。
こんにちは。
20歳の女子大生です。
自分が何がしたいのか全く分からず、大人になるのが怖いです。
私は小さな頃から将来の夢がない子どもで、小学生の時に将来の夢を書かされ友達のをそのまま真似して書いたら全員分張り出されて母に怒られたくらいです。
歳を重ねてもそれは変わらず、大学受験も周りの友達が「将来人を助ける医者になりたいから医学部」「夏目漱石の研究がしたいから文学部」と選んでいくなか、学力のバランスと学費で進学先を決定してしまいました。
大学3年になり、いよいよ就活の文字も見え始めるなか、自分のやりたいことやなりたいものは相変わらずありません。
どうしてみんなは分かるんですか、私これになりたい、これをしたいって。
自分のことすら何も分かっていない人間なので責任を持つ大人になるのが怖いです。
大人になりたくないです。
でも私はもう20歳で、お酒も飲めるようになって、私のことを子どもと扱ってくれる人はいなくなりました。
子どもじゃないとしたら私はもう大人なんでしょうか。
未来を描くことっていつどこで学ぶべきだったのでしょう。
(20歳・女性・学生)
こんにちは。
毎日不安なニュースが飛び交っているので、少しでも気持ちの切り替えスイッチを増やしたくて、クッキーの詰め合わせ缶をお供にこの原稿を書いています。
詰め合わせ缶って開けた時は宝箱を手にしたように幸せだけど、好きな種類ばかり食べちゃうとあっという間にバランス崩れるんだよなぁ。
筋トレみたいに1種類ずつ順番に食べた方がいいのだろうか…。
さて、お悩みをお送りいただきありがとうございます。
まず最初に、未来を描くことなんて誰も学んでいないし、方法を知っているわけではないので安心してください。
私も小さな頃から、作文のたびにその時々に書くことが変わったり、その時はまっているドラマの主役の職業を書いたり、なんとも軽はずみな自分が嫌でした。
なりたいものが明確な人や、明確な志望理由とともにどんどん新しい道へ進んでいく同級生が本当に輝いて見えて、「みんないつの間に決めたんだろう…」と、内心すごく焦って、ずっとコンプレックスもありました。
だけど実際のところ、大半の人は相談者さんや私と同じだと思います。
みんな、今思うことを言語化しているから、なりたいものがあるように見えるかもしれないけど、10年前に言ったことと同じ道を歩いている人ばかりではありません。
私の夫はプロスポーツ選手ですが、そんなふうに3歳の時からなりたかったものに一直線に向かって夢を叶えている人は、本当にごく一部の人です。
将来の道を決めた人にだけ人生の道が拓かれて、そこを歩いていけるように思っているかもしれませんが、この後、自分がどうなっていきたいのか、今どう思っているのかを言葉にすることは、先の見えない人生の道を歩いていく中での、指針でしかありません。
たとえば「不思議の国のアリス」のお話の中のような森で道に迷ったとして、「こっちはなんだかお花が多いから、この先に理想としている湖があるかもしれない…!」と思って右に行ったとしたら、それは自分なりの指針に基づいて右に曲がるということですが、どちらに曲がっても森の中を歩き続けるということ自体は変わらないんです。
だけど、その都度「こう思う」を自分なりに考えたり、誰かに話してみたりしながら、道を選んでいく、だから一歩先へ進めるんだと思います。
相談者さんは今、道を選ぶのが怖くて大人になりたくないと仰っていますが、どちらの道が正解か分からないから、このままここにいたいと思っても、夜になったり朝になったりを繰り返して、時間は刻一刻と進んでいきます。
もちろん、休むことはあってもいいと思いますが、たとえ何が正解が分からなくても、自分がどう思うかの判断で進めば、そこでの反省や得た知識が、次回の分かれ道で必ず自分の糧になるはずです。
だから、せっかく歩ける体力があるのなら、正解なんて分からなくても自分の理想郷を探すために選び続けて歩いた方がいいと私は思います。
今の時点では理想すら分からないかもしれませんが、森を歩いて色々なものに触れるたびに理想の状態がクリアになっていったりもします。
そしていつか振り返った時に初めて、「この道を選んでよかった」と実感できたりするんだと思います。
このお悩みをこたえるにあたって、21歳の時に書いていたブログを読み返したのですが
(ちなみにまだ公開されています…。もし興味あれば「村上萌 アメブロ」とかで検索していただくと最初の方の記事は、相談者さんと同い年くらいの時にひたすら思ったことを書いているので、今の私の言葉より生々しいかもです。)
当時の私は「ヒールのある靴を履いた瞬間の衝撃が素晴らしすぎて、小さなことでこんなにも洋服が楽しめて自信が持てるなら、靴の素晴らしさをもっと広めたい!」と書いていたかと思ったら別の日には「そもそも靴屋さんになるとそれができるのか…?小さなことでわくわくする瞬間って他には何があるんだろう?」と、香水の会社でバイトしたり、雑貨屋でインターンをしたり、今見返すと、常に「これかな?それともこれかな…?」と、何かを探しているように動き続けていました。
その過程で、友達には「やりたいことがあって羨ましい」と言われたこともありましたが、私からすると、やりたいことが分からないから探しているだけでした。
相談者さんは「なんでみんなは分かるの?」と仰っていますが、社会と関わる方法がごまんとある中で、どんな方法が自分らしく役に立てるのか、それを「どこかにこたえがあるかもしれない」と思い続ける気持ちが、大事なんだと思います。
結論から言うと、こたえなんてないのですが、そうやって「どうしたらもっと良くなるかな」を続けることで、自分らしさみたいなものがようやく見えてくるはずです。
これから就職活動ということで、ますます自分以外はみんな、やりたいことが明確にあるように見えて不安になることも多いかもしれません。
だけど堂々として見えるみんなも、今の時点での自分を一生懸命自己分析して、「こう思う」ということを相手に伝わるように必死で言葉にしているんです。
それでいいんです。
たとえやりたい職業が分からなくても、自分はどんな形で社会と接したいか、どんな人と出会っていきたいか、WHAT(職業)にこだわらず、WHY(どういう気持ちで今これを選んでいるのか)の部分だけ、その都度自分が考えられていれば、やり方が変わることなんていくらだってあっていいと思います。
私も20年前の自分がなりたかったものに今なれているかというと、想像もしていなかったことをしていますが、その都度自分なりに今思うベストで道を曲がって前に進み、失敗しても歩き続けたから、今それなりに自分の毎日が好きでいられるのかなと思っています。
相談者さんは責任を持つ大人になるのが怖いと仰っていますが、それと同じだけ、選んだ後の喜びを実感できる立場でもあるということです。
繰り返しになりますが、先へ続く道が明確に見えた上で進んでいる人なんてほとんどいません。
考えながら選び続けて、そして歩き続ける。
たとえ就職したってその繰り返しです。
だけど、それは暗い森を歩き続けるということではありません。
選ぶ回数を重ねれば重ねるだけ、森を進むスピードも速くなり勘も研ぎ澄まされて、自分なりのお気に入りの遊び方だって見つかります。
自分の中で明確な指針がないことに焦らず、今の自分なりに思うことを振り絞って、言葉にしたり、選び続けることで、そのうちに、経験に基づいて、自分なりの指針ができていきます。
どうか相談者さんなりの歩みを踏み出せますように。
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身近な人にこそ言えない、人の悩みは十人十色。
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