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いろいろな家庭のだんらんのかたちを、住まいや暮らしの工夫から読み解く連載「家族がつながる、だんらんの部屋づくり」。

今回登場するのは、フリーランスディレクターとして、さまざまなブランドとのコラボレーションやPRを手掛ける石岡真実さん

シンプルでセンスの光るファッションやライフスタイル、そして飾らないお人柄が垣間見える真実さんのInstagramは、大人気!

現在は東京都内のマンションで、Instagramで「肉父さん」の愛称で親しまれているご主人と、5歳になる夏太郎くんと暮らす真実さん。
にぎやかなだんらんの場におじゃまして、家族で暮らしを楽しむ秘訣を教えていただきました。

カレーの香りが漂う土曜日のお昼どき。
あたたかみのある木のダイニングテーブルに、大きなカレー皿がふたつと、小さなボウルがひとつ。
そして野菜たっぷりのおかずが置かれていきます。

真実さんが「できたよー」と声をかけると、お父さんと夏太郎くんが次々と席につき、「いただきます!」の挨拶とともにランチが始まります。
「このピクルスどう?」と問いかける真実さんに、「うまい」とお父さんが一言。
真実さんもピクルスを食べながら「うん、いい感じ」とうなずきます。

おどけながら“辛い”のジェスチャーをしたり、お父さんとにらめっこを始めたり、終始楽しそうな夏太郎くん。
そうこうするうちに、お父さんはあっという間にカレーを完食!

空っぽのお皿が、真実さんのごはんのおいしさを何よりも雄弁に伝えていました。

▲この日の献立は、真実さん特製「だしカレー」のほか、行きつけの店で教わったという蒸し鶏のサラダ(甘酸っぱい特製ソースが最高!)、タコ入りポテサラ、小松菜炒めの温玉のせ。カレーには赤玉ねぎのピクルスやごぼうサラダを添えて、ヘルシーさ満点!

▲カレーをほおばる夏太郎くんの幸せそうな顔…!やっぱりお母さんのカレーは一番のごちそう。

 

料理にひと工夫で、食欲も栄養もアップ

都内の住宅街にある2LDKのマンション。
ドアを開けて明るい光が差し込むリビングに入ると、お父さんと遊んでいた夏太郎くんの笑い声が響き渡ります。
台所できびきびとお昼の準備をしている真実さんは、「我が家のだんらんの場はダイニングテーブルですね」と断言します。

朝ごはんの時間は、平日に家族が揃う貴重な機会。
お父さんは仕事で帰宅が遅い日も多いそうですが、週1回は家族みんなで夜ごはんを食べるようにしていると言います。

真実「料理上手だったおばあちゃんの影響で作るのが好きになったんですけど、以前は完全に外食派。外に飲みに行く日も多かったんです。夏太郎が生まれて家で過ごす時間が増えて、おうちごはんに気持ちが向いた気がします」

Instagramに時々投稿される食卓風景「#マミノメシ」を見ると、四季折々の食材を使ったおいしそうなごはんがずらり。
日々の食事を楽しんでいる様子が伺えます。

「そんなに凝った料理は作ってないですよ」と言う真実さんですが、スパイスを効かせたり、食材の組み合わせが個性的だったりと、どれもひと工夫あり、お店のごはんのような特別感が。

▲ほくほくのポテトサラダに歯ごたえのあるタコを混ぜるなど、食感に変化をつけるのも真実さんが意識していること。仕上げに香ばしい黒すりごまをたっぷりとかけて、風味とともに栄養もプラス。

最近は家族の健康も意識して、野菜や体にいい食材を多く取り入れているそう。

真実「父さんはウインナーやミートボールが大好きで、どんどん育ってしまって(笑)」

お父さん「毎日、食べていたね」

真実「でも、そうすると夏太郎も一緒に食べてしまうんですよね。もちろんそれ自体は悪いことじゃないんですけど、他にもいろいろな味を知ってほしいな、と思ってごはんを作っています」

▲お酒も好きな真実さん。ナチュラルワインにハマって、自宅用のワインセラーも購入したそう。食事中に飲むんですか?と質問すると、「食事の前から」とにっこり。

 

がんばりすぎないことが、
料理を続ける秘訣

おしゃべりしたり、部屋を駆け回ったり。
元気いっぱいの夏太郎くんを見ながら「平日は戦場ですよ」とお父さん。
日中は夫婦ともに忙しく働き、帰宅して夜ごはんを食べたら夏太郎くんを寝かしつけ、そのまま寝落ちすることも。
多忙な日々の中でもごはん作りを続ける秘訣を真実さんに伺うと…。

真実「毎回、ちゃんと作っているわけじゃないですから。朝は納豆やしらすとか、ほとんど調理しないメニューも多いですよ。そういう日の夜はちょっと豪勢にしゃぶしゃぶにしてメリハリをつけたり。朝ごはんはこうする、夜ごはんはこうする、みたいなルールは、あえて作らないようにしています」

そんな真実さんの一番の味方は、お父さん。

真実「ありがたいことに、適当なごはんを作っても文句を言ったりしないんですよね。私が疲れていたら外で食べてきてくれるし」

▲真実さんの撮影中はお父さんが夏太郎くんと遊んだり、ささっと着替えさせたり。この取材の間にも、阿吽の呼吸でサポートするお父さんの姿が見られました。

お父さん「毎日インスタに載せているような料理を用意していたら、疲れちゃいますからね。真実はやるときはやる、やらないときはやらない。自分を持っていてかっこいいですよね。そのくらい肩の力を抜いて生活するのが豊かなんじゃないかなって。ていうか、ワシの髪型、海苔みたいじゃないですか?」

▲ちなみに肉父さんというあだ名をつけたのは…?「この人ですよ…!」と真実さんを指差すお父さん(と、爆笑する真実さん)。時々は夫婦で居酒屋に行って、飲みながら語らう日もあるそう。「父さんに仕事の相談をすると、自分にはない考え方を聞けたりして参考になるんですよね。そういうときに彼への尊敬の気持ちを再確認します」

 

おでかけや旅を通して
伝えたいこと

平日はなかなか家族でゆっくりする時間がとれないぶん、大切にしているのが週末。
夫婦ともに多忙だからこそ、定期的に予定をすりあわせ、家族で休日を過ごす日を決めるようにしているのだとか。

お父さん「晴れた日に1日中家にいられないんですよね。太陽を浴びたい!」
真実「太陽こそ心の栄養!」
と言うふたり。

夏太郎くんを連れて公園でピクニック、キャンプで川遊び…etc. アクティブに休日を過ごしているそう。
時には家族旅行に出かけることも。


▲千葉県南房総市にある「オレンジ村オートキャンプ場」での家族キャンプの様子。季節の柑橘が採れる併設の農園でレモン狩りをして、夏太郎くんはレモネードを、大人はレモンたっぷりのハイボールを楽しんだそう。真実さんお手製のおつまみもおいしそう!

真実さんもお父さんも、楽しかった思い出とともに夏太郎くんに残したいのは「経験」だと言います。

お父さん「夏太郎には、変化の激しい時代に対応できる人間になってほしい。それって引き出しが多いほうがいいと思うんです。家の外に出てさまざまなものを見て、好きな道に進んでくれたら」

真実「偏見を持ってほしくないんですよね。旅を通して人とふれあうことで、いろいろな人や考え方が存在することを知るのは、意味があると思っています」

そして、おでかけや旅とともに大事にしているのが、節分や子どもの日など、季節の行事やイベント。
真実さんはその日のテーマに合わせた料理を並べ、お父さんも先頭を切って盛り上げるから、夏太郎くんは大喜び!

真実さんのInstagramでは、節分の日に本気の鬼コスプレをして暴れまわるお父さんの動画が、公開されています。

 

▲節分恒例、鬼の登場タイム(8枚目)。追いかけてくる黄鬼に、「やめて〜」と言いながらうれしそうに豆をぶつける夏太郎くん。まったく怖がっていないようです(笑)。ちなみに2021年は青鬼、2020年は赤鬼に扮していたお父さん。次は何色か目が離せません。

 

子どもも大人も
のびのびと過ごせる住まいに

現在のマンションに引っ越してきたのは、4年前のこと。

真実「以前はマンションの2階に住んでいたんですけど、夏太郎が2歳くらいになると活発に動き回るようになって。生活音が心配で1階にある部屋に引っ越すことにしたんです。気兼ねなく遊べるぶん、のびのび育ったんじゃないかな」

▲リビングは夏太郎くんの大切な遊び場。「おもちゃ箱を別室に移動させたりもしたんですけど、リビングで過ごす時間が長いから、結局ここに戻ってきちゃうんですよね」と笑うお父さん。

このマンションへ引っ越したことによって、真実さんの暮らしにも変化が。好みのインテリアを揃えて、部屋を作る楽しみを覚えたのだそう。

真実「素材を生かしたぬくもりがある家具や、味のあるアンティークに心惹かれます。ただ、ナチュラルといってもほのぼのした感じではなく、木と黒のアイアンを組み合せるとか、無骨なテイストで雰囲気を引き締めるのが好きですね」

特に真実さんが気に入っているのが、青山のインテリアショップ「pejite」で出会ったアンティークの食器棚。
同じ棚を横に並べてロータイプのカップボード風に使用しています。
食器棚の上は、真実さんだけの特別な場所。
季節のお花を生けたり、額装したアートを飾ったり。
真実さんの「大好き」がここに集まっています。

▲食器棚の上に飾っている絵は、画家のyukartさんに真実さんをイメージして描いてもらったもの。額縁は偶然入ったインテリアショップで一目惚れしたデッドストック。

そして食器棚の中に収められている器もまた、真実さんの大切な宝物。

真実「引っ越して台所が広くなってから料理へのやる気がアップして、そうなると器にも興味が沸いてきたんです。シンプルな料理でも素敵な器に盛ると、断然おいしそうに見えるんですよね」

▲真実さんのお気に入りの器たち。左の茶色の小皿と大皿は二階堂明弘さん、中央上の片口と浅鉢は小林徹也さん、中央の長皿はサードセラミックス、中央下の白い小皿は吉田直嗣さん、右下のブルーのボウルはmushimegane books.の作品。料理研究家の中本千尋さんがプロデュースしたオーバルの器(右上)も愛用。作家の思いや背景を知ることで、さらに愛着がわいてくるのだそう。

▲買った器はしまい込まず、どんどん活用している真実さん。割れたり欠けたりした器は、金継ぎ教室に通って自分の手で修繕。金があしらわれた器は、まるでアート作品のよう。

家が変わると暮らしが変わり、生活も豊かになる。
インテリアや器について生き生きと語る真実さんの笑顔から、そんな素敵な循環が生まれているのを感じました。

そして現在、真実さんたちは念願のマイホームを建築中なのだとか。

真実「今よりも広々としたリビングになる予定なんです。家族と顔を合わせておしゃべりできるような、一体感のある空間にしたいなって思っています」

 

Point!
生活にメリハリをつける、3つの工夫

仕事や子育てに忙しい日々が続いても、暮らしを楽しむ気持ちを忘れないように。
真実さんが日頃取り入れている習慣を教えていただきました。

1.香りの力で気分を一新
朝、昼、晩…etc. 気持ちを切り替えたいときにお香を焚くのが真実さんのルーティン。
「お香には空気を浄化する効果があるような気がするんです。食器棚の上やサイドテーブル、玄関、トイレ。家のあちこちで焚いています」

▲スキンケアブランド「DAMDAM」が老舗お香メーカー「玉初堂」とコラボして作ったオリジナルのお香。中でも真実さんのお気に入りは「SHISO(紫蘇)」。「食材でもある紫蘇の香りなら、ダイニングで焚いても香りがじゃまにならないですよ」

2.お花は気分のバロメーター
「お花を飾るのは心に余裕があるとき。お花を見ながら自分の状態に気づくんです」と語る真実さん。
花器とのバランスを見て茎をカットしながら生けるのがポイント。曲がった枝も活かすのが真実さん流。

▲どんなお花を組み合わせたらいいかわからないときは、同じお花をたくさん買うのもおすすめ、と真実さん。「大きな花器に無造作に生けると洗練された雰囲気になるし、小さな花器にちょこちょこ飾るのもかわいいです」

3.旅の思い出を食卓に
真実さんは、旅行で訪れた先で名産の野菜や調味料を買って、漬物やピクルスなどの保存食にして楽しんでいるのだそう。
作っている間も、食べているときも旅の思い出がよみがえる、素敵なアイデア。

▲左は「オレンジ村オートキャンプ場」で収穫したレモンを刻み、米麹と塩を混ぜたレモン塩麹。右は奄美大島で買ったきび酢ときび砂糖を合わせ、赤玉ねぎを漬けたピクルス。まろやかな酸味のピクルスはカレーと相性抜群!

 

家族に広がる
「おいしい」「楽しい」の気持ち

取材中、真実さんに「ねえねえ、ピーマン食べたい!」と何度も話しかける夏太郎くん。
ピーマンというと、子どもが苦手な食材のイメージがありますが…?

真実「去年、私が野菜の重ね蒸しにハマっていたときがあって。重ね蒸しは食材を重ねて蒸し煮する調理法で、野菜がびっくりするほど甘くなるんです。その方法でピーマンの肉詰めを作ったら、夏太郎の大好物になったみたいで」

▲レモン塩麹の話をしていたら「味見したい!」とやってきた夏太郎くん。さすがに苦かったようで渋い顔になっていましたが、こんなふうに食への好奇心が育っていくのだな、と感じた場面でした。

真実「夏太郎は苦手なものは全然食べなくて苦労することもあるんですけど、一緒に料理すると楽しいのか、いっぱい食べてくれたりするんです」

日々食べることも、大切なかけがえのない経験。
毎日楽しみながら食を工夫する真実さんの姿は、夏太郎くんにたくさんのメッセージを伝えているようです。

 

今回の取材で印象的だったのは、「だんらんをしていてよかったと思うことは?」という質問に対する答えでした。

お父さん「そこまで深く考えていない気がしますね。家族で過ごせるときはコミュニケーションを取りながら楽しい時間にする。すごくシンプルなことですよね」

真実「夏太郎が大きくなったときに、あのときたくさん遊んでくれたな、と思ってくれたらうれしいですけどね」

ふたりにとってだんらんは目標ではなく、あたりまえのことなのだと感じました。

だんらんを意識しなくても、家族で楽しむモードにスイッチを切り替えられる。
張り切るときとがんばらないときのバランスを自然に取れる。
お互いの状況を察して、必要に応じて助け合える。
そんな真実さんたちの姿は、とても成熟した家族のあり方のように見えます。

一昔前に「家族サービス」という言葉がありましたが、家族の時間は作ってあげるものでも、作ってもらうものでもなく、家族それぞれが楽しむ気持ちを共有しながら、一緒に作り上げていくものではないでしょうか。

毎日がんばらなくてもいいから、家族で楽しめる時間は全力で楽しむ!
家族中に笑顔が広がれば、いつのまにかだんらんの場もできあがっているはずです。

 

おまけ:シンプルでぬくもりのある
アイテムが揃うインテリアショップ

日本の古い家具や作家ものの器など、手仕事のあたたかみを感じさせるインテリアが好きな真実さんに、行きつけのお店を教えていただきました。

pejite 青山
益子の人気インテリアショップの2号店。明治〜昭和初期に作られた日本の古家具や古道具が整然と並ぶ店内は静かな雰囲気。益子を中心とした作家の器も充実しています。

だいどこ道具 ツチキリ
吉祥寺にある台所用品店。お店に並んでいるキッチングッズは、店主の土切さんが実際に使用してセレクトしたものばかり。いろいろな使い方もアドバイスしてもらえます。

AELU
代々木上原にあるギャラリー。国内外の作家ものの器が多数展示されています。常設展のほか、定期的に個展も開催されていて、訪れるたびに新しい出会いがあります。

 

Writer:野田りえ
Photo:Maya Masuda
Editor:Saki Goda

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