NEXT WEEKEND DATE

大きな声では言いづらいちょっとした悩みや、あえて近い存在のひとには話しにくい悩みは誰にでもあるもの…。

この連載では、みなさまから匿名で募集したお悩みに、NEXTWEEKEND編集長 村上萌が答えていきます。

今日ご紹介するのは、こんなお悩みです。

萌さんこんにちは。いつもコラムで萌さんの考えを興味深く拝読しています。このコーナーもあと少しということで、間に合うかな?間に合え〜!と思いながら、メールを送らせていただきます。

先日、祖母が倒れ現在も入院中です。幸い一命は取り留めたものの、意識が戻らない可能性も高いし、高齢のため体調が悪化してそのまま命が助からないこともあると医師からは言われています。 私の家から祖母の住む街までは遠いのですが、時間を見つけて面会には行くようにしています。祖母に声をかけても返ってくることはありませんが、目が覚めますようにと願いながら日常のことを話しかけています。

祖母に会いに行ったり、祖母のことを考えると涙が出てきます。他の家族からは「覚悟はしておいた方が良い」と言われていますが、頭ではわかっていても涙は出てくるため、きっと気持ちでは覚悟ができていないのだと思います。

頭で考えてもダメなら行動を変えてみようと、できるだけ面会の時は明るくするよう心掛けたり、普段は祖母のことを考えすぎないように忙しくしてみたりもしますが、祖母の変わり果てた姿を見たり、祖母とのことを思い出したりすると、やはり涙が出ます。最近は泣いている時が多くて、自分の弱さにも嫌になります。

「覚悟をする」って言葉ではよく使うけど、実際には難しいなと実感しています。萌さんならこのような状況をどう受け止めますか?また、「覚悟をする」ということをどう捉え、考えたり行動したりしますか?ご意見参考にさせていただきたいです。

 

今日は岩手の安比高原の山奥でこの原稿を書いています。あと少し行くと秋田県。これまでの人生でほとんど来たことのなかった東北ですが、どこへ行っても食材が美味しく温泉が湧き出ていて、自然というカテゴリーを切り取ると日本って本当に豊かな国だな、とつくづく思います。

さて、お悩みをお送りいただきありがとうございます。おばあちゃま心配ですね。私もかなりおばあちゃんっこだったので、亡くなって10年近く経つ今でも「この話したかったな」「一緒に見たかったな」「ばあばだったら喜んだろうな」と、ことあるごとに思い出します。でも、不思議なことにそんなに時間が経っている気がしないんですよね。それはきっと、関係がちゃんとあの時のままで止まっていて、それでいて、古くなることなくいつも近くに感じているからなのだと思います。

祖母が母より先、母が子より先、子が孫より先、と生まれた順に天国に行くことは当然のように見えて簡単ではありません。いずれ全員行くにせよ、この順番で行けることは何よりの幸せです。おばあちゃんだって、かつて誰かの孫だった訳ですが、そろそろ順番が巡ってきたのだな、と、順番を全うされようとしていることを誇りに思ってさしあげてください。

私の祖母は祖父に先立たれて、友達も少しずつ天国へ行き、それでも彼女なりに楽しそうに暮らしていましたが、10年近くかけて家から物はどんどんなくなり、自分のお気に入りの写真を遺影に指定し、お棺の中には初孫が編んでくれたマフラーと、戦時中に祖父から届いたラブレター、毎晩使っていたツゲの櫛を入れるように、と、明確に指示されていました。そして、いつその日が来てもいいように…と、いつもペディキュアまで綺麗な桜色に塗って、久々にあちらでみんなに再会できる日を、なんだか楽しみにしているようでもありました。

亡くなる数年前から、祖母は何度か一命を取り留めていましたが、誰もいなくなった病室で「萌、またばあばは逝けなかったよ」と、横たわりながら冗談のように小声で言うので、こちらは生きていてさえくれればいいと思っていましたが、ここまで生きたからこそ見える景色、生き様への考え方があって、ここまで来たら、死ぬことは必ずしも恐怖だけではなく、心から「順番がやってきた」とも感じているのだな、なんて思っていました。

ここで、おばあちゃまの人生も、相談者さんとの関係もすべて終わりだと思うと覚悟はできないかもしれませんが、関係は確実にそれぞれの心の中で続いていくはずです。

ヨシタケシンスケさんの絵本で「このあと どうしちゃおう」というものがあるのですが、もしよければ読んでみてください。おじいちゃんが亡くなった後にたまたま孫が見つけたノートに、天国に行った後にやりたいことが書いてあるおじいちゃんの妄想ノートの話なのですが、それがなんとも楽しそうで。どれだけ威張っている政治家でも、死んだ後にどうなるかということを、今生きている人は誰も明確には知りませんが、だからこそ少しでも楽しい想像をして、自分自身も人生をかけてあちらへ行く準備をしながらも、先に行く人を見送ってあげたいものです。

会話はできないかもしれませんが、直接届けられるうちに、おばあちゃまに沢山感謝や楽しかった思い出の話を伝えてあげてくださいね。私も、心の中での距離は近くなりましたが、やっぱり姿が目に見えないと「ばあば、ちゃんと聞いてるのかな…、いつも見守ってくれているとは思っているけど、なんか今日はどこか旅行に行ってそうだな」と、たまに不安になるので笑。

これからもおばあちゃまと良き関係を紡いでいけますように。応援しています!

 

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「編集長がこたえます」が本になりました

人生の変化を迎える全ての女性に贈りたい!

NEXTWEEKENDの人気連載「編集長がこたえます」が1冊の本になりました。

その名も「深夜の、かけこみ横丁」。

「自分が何者でもないことが不安です」
「浮気した夫とのこれから」
「仕事に求めるものを見失いました」
「生きている意味がわかりません」
「セックスレスで、毎晩涙で枕を濡らしています」

身近な人にこそ言えない、人の悩みは十人十色。
今日もきっと、誰かが悩んでる。

横丁で隣に座ったような気持ちで、誰かのお悩みを聞いて、考えて、語って。
気づけば自分のお悩みもスッキリするような1冊です。


▲共感を集めた31のお悩みを掲載
恋愛、人間関係、仕事、子育て、自分自身…
WEBでは選べなかった、深い内容も初公開。


▲悩みを解決する5ステップの思考法&書き込みノート
自分のモヤモヤを客観視することで今やるべきことが見えるかも…!
今自分が悩んでいることを書きこんで整理できるノートつきです。


▲悩んだ日に食べたい、横丁のレシピ
悩んだ日でもお腹は空く。
食べたら明日からちょっと元気になるようなおつまみとお酒のレシピも、お悩みのシーンごとに掲載しました。

「深夜の、かけこみ横丁」
著者:村上萌
発行元:カエルム株式会社
仕様:176ページ/B6版製本
定価:1760円(本体1600円)
流通:全国書店、ネット書店
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