こんにちは。NEXTWEEKEND代表の村上萌です。
NEXTWEEKENDでは、毎月やってくる1ヶ月を楽しみ尽くせるように、とテーマを設けていますが、2022年の3月に掲げている月間テーマは「色めく季節の過ごし方」。
みんなで楽しむSNS上のハッシュタグは #春を理由に です。
コンセプトメッセージはこちら。
そして、NEXTWEEKENDで考えた3月に叶えたいWISHLISTはこの3つ。
1.おいしいを追求したい
2.今年は色で遊びたい
3.新しい技術を身に付けたい
私は、このWISHLISTに合わせて毎月3本の記事を書いています。
1本目は「高価でも、ブランドでもない日本酒の味が忘れられない話」という記事を書きましたが、2本目となる今回は“新しい技術を身につけたい”というWISHLISTに合わせて(もはや合わないかもしれないけれど…)、小さな野心を叶えた話を書きたいと思います。
私は去年の雪降るバレンタインデーの日に長崎に引っ越しました。
ほぼ修学旅行以来のこの地には親戚がいるわけでもなく、帰ろうと思ってもすぐ東京に行ける距離でもなく、きっと東京や大阪でも鳴っていたはずの夕方17時のチャイムの音は、車がないとどこにも行けない新しい家の中ではあまりに大きく響いて、寂しい気持ちになることもしばしばありました。
だけど気づけば2回目の春。
馴染みの店もできてそれなりにコツを掴み、最初よりも余裕が出てきた今日この頃、1年の間に長崎県外の方から「長崎に住んでいるなら、あそこの喫茶店に行った?」と、聞かれ続けてきた場所が気になり始めました。
長崎空港から約30分程度の場所にある、川棚という小さな駅のすぐ近くの「あんでるせん」という喫茶店。
ネットで少し調べてみると、価値観が変わるとか、異次元とか、マスターが超能力者とか様々な記事が出てきます。
占いや不思議な世界の話は嫌いではないし、目に見えない世界が存在するだろうとは思っていますが、その世界に依存してしまうと自分で決められない人になりそうなので、私はほとんど行きません。
触れるとしたら朝のニュースの星占いくらい…。
だけど…!こんなにも多くの人が「いつか行きたい場所」にあげている店がどんなところなのかは純粋に気になるし、そこに30分程度で行けるところに住んでいる人間に行かない理由があるのか?と、1年の間「そういう店があるらしいね〜」程度だった気持ちが、突然百聞は一見に如かず精神がマックスになり、次の瞬間には電話をかけていました。
(謎に和室の写真を差し込んでみますが)
聞けば、カウンター席に座っている方はお正月の三ヶ日の間から2000回電話をかけたとか、2ヶ月先の予約が取れたから航空券を取ったとか、まるでミシュラン三つ星のお店のようですが、電話をするとワンコールで繋がり、「さっきキャンセルが出たから明日入れますよ」とのこと。
その流れに完全に運命を感じて、すべてを投げ捨ててでも行かねば…!なんて気持ちになりましたが、冷静にカレンダーを見るとどう考えてもキャンセルできない予定ばかり。
気持ちを落ち着かせて次の空きを確認すると、1ヶ月後ならということでついに先週行ってきたのでした。
私は血液型こそA型ですが、五感で体感するものに対して事前にクチコミを見尽くしてしまうことはあまり好きではなく、できれば先入観なく自身から湧き出てくるシンプルな感情を大切にしたいと思っているため、友人から送られてきた「あんでるせん」に関するYouTubeは薄目で見つつも(見るんかい)、今までにないほどの早さで様々な仕事の納品を終わらせ、来たる金曜日、約束の13時に川棚へ到着しました。
すごい、渋い!
ここで見たことを文字にしたとしても、これまでにテレビで見たマジックと変わらないと思われてしまうかもしれないので詳しくは書きません。
最初はなんとかタネを暴こうと監視カメラを探したり、自分以外全員さくらなのではと疑ったり、見えない糸があるのではと覗き込んだりしていましたが、あまりに不思議なことが目の前で起き続けるので、最後は疑うことすらもったいなく、知らない世界を純粋に楽しみ、大きな拍手を送っていました。
(そもそも20数人しか入れない店内で、一人1000円のみでマスター自身も毎日4時間を費やすのだから、さくらを雇うことは赤字にしかならないし、仮にすべてがマジックでタネがあったとしても、素晴らしいおもてなしなのですが…)
カウンターに座れるのは、運良く毎月ついたちの電話でお店につながった人だけ、ということで私はカウンター席の後ろの後ろの硬いベンチに4時間立ちっぱなし(寄りかかるところもなし)という、なかなかストイックな環境だったので、正直腰は割れそうになりましたが、翌朝もまだ余韻に浸りながら曲がったフォークを眺めるほどには、自分の中で新しい体験になりました。
不思議体験以外に不思議だったことといえば、会場にいた20数名の方の中に長崎県内から来たという方がほとんどいなかったこと。(おそらく私だけでした)
東京、大阪、愛媛など、みなさん遠くから目指してこられていたのです。
後日長崎の方にこの店の話をすると、みんな「あぁ、知ってる知ってる」とは言うものの、行ったことがあるという方には会えず。
これは、北海道に住んでいた頃に富良野のラベンダー畑の話をしていても思ったことなのですが、遠方の人は国内外から7月のラベンダー畑をひとめ見たいと北海道を訪ねるのに、札幌に住む人からは「そういえば行ったことないけど、遠いしね。でもいつでも行けるから」なんて話を聞くことも。
“いつでも行ける”と“行ったことがある”は、やっぱり全然違うわけで、100年時代とはいえのんびり先延ばしすることはせず、これからも気になったことは自分で体験して、人の言葉ではなく自分で語りたい、と改めて思ったのでした。
そして4時間もの間、飽きさせることなく人を惹きつけるショーを目の当たりにして、マスターのような能力は難しくても、人の時間を楽しくする技術を身につけたいなと思った春の始まり。
引き続き #春を理由に で、素敵な3月になりますように!