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コラム「知っておきたい器のあれこれ」では、自宅ごはんが増えたみなさまに向けて、食周りのプロたちから日々の食卓に使えるアイデアをおすそ分けしてもらう番外編をお届けしています。

▼第1回目 fromage&food mikoto今井真希さん
チーズを調味料として普段使いしてみる

▼第2回目 lalafarmtable 奥薗 和子さん
アクセントとして上手に使う、旬野菜とハーブの楽しみ

▼第3回目 陶芸家 八代 成実さん
ふだんの料理も、器と盛り付けで気分をあげる

 

今回お話を伺ったのは、池袋から程近い要町のイタリアンレストラン fra.. でシェフをされている新井直之さん。

fra..さんでは、東京周辺の生産者さんから仕入れた旬の食材を仕入れられていて、読んでいるだけでワクワクするメニューがたくさん。

 

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「香りが料理の国籍を決める」、「“ちょい足し”よりも“ちょい引き”」、「ネギ塩ダレみたいなイタリアのソース」…
料理が楽しくなりそうなキーワードたっぷりの、素敵なお話をしていただきました。

 

 

我が家の鉄板レシピ

意外にも、新井さんの鉄板レシピは誰もがおなじみの家庭料理。

シンプルだけれど奥が深い、現在も修行中だという味を教えてくれました。

新井さん:
「家庭料理の中では、母のけんちん汁が最高だと思っています。
水分はあまり多くせず、野菜を炒めて煮溶かした“食べる汁”として作ります。

まだまだ母の味には到達せず、今も修行中なんです。」

 

新井家のけんちん汁のレシピ

材料
にんじん、ゴボウ、大根、里芋、厚揚げ豆腐か焼き豆腐
醤油、ごま油
作り方
1.にんじん、ごぼう、大根、里芋、厚揚げ豆腐(または焼き豆腐)を小さめに切り、胡麻油をひいた鍋で炒める。
このとき野菜、厚揚げ豆腐の順に炒め、厚揚げ豆腐は軽く崩しておく。

2.野菜の表面が削れはじめたら、野菜がかぶるぐらいの水を加え、野菜にしっかり火が通るまで煮込む。

3.汁に野菜の味が出てきたら、醤油で味を整えて完成。
※醤油は味を見ながら足す(4人前でお玉半分程度)

野菜のおいしさをたっぷり味わえそうなレシピ。

体にも優しそうなところも嬉しいですね。

 

お気に入りのスパイスや調味料

新井さん:
「香りが料理の国籍を決めると言われていて、香りをとても大事にしています。

特に、ラテンアメリカや中東の料理はまだまだ知らないことが多く、ハーブやスパイスの使い方などを勉強しているところです。

お気に入りは『デュカ』と呼ばれるエジプトのスパイスミックス。

クミン・コリアンダーシード・ナッツ・ごまなどが使われていて、パンでも野菜でも、何にでも合うんですよ。

料理家 たかはしよしこさんのものを使っていて、パッケージもかわいいですし、ウェブでも購入できます。
(上の写真の中央は、同じくたかはしよしこさんの『アルル塩』)

肉料理にはハーブミックスやキャトルエピス、魚や野菜にはオレガノとマジョラムを使うことが多いですね。
グリルやマリネに加えて、香らせます。

メーカーは『vox spice』が好きです。
オーガニックハーブなので、香りが生き生きしているなと感じます。」


▲香りづけには、フレッシュハーブも愛用。
「青梅ファームで栽培している、エパソテというハーブは最近出会ったもの。ミント、フェンネルが合わさったような複雑な香りなんですよ。」

 

新井さん:
「家庭では、使い終わった出汁パックの中身を他の料理の調味料に使うことも。

醤油と胡麻と合わせて炒めてふりかけにしたり、塩一緒に野菜を揉み込んで浅漬けにしたり。

この季節なら、とうもろこしと一緒に炊き込みご飯にするのもいいですね。

あとは、醤油。
地元埼玉の弓削多醤油など、伝統的な製法の醤油は、本当に香りが豊かで味が深いんです。」

 

出汁パックのポテンシャルにびっくり…!

とうもろこしご飯はすぐにでも、試してみたくなりました。

 

お気に入りの器とキッチン道具

新井さん:
「青山 『うつわ一客』さんで購入した、林亮次さんの 志野 ご飯茶碗は、薄桃色の色味と貫入が美しく一目惚れでした。

椀の丸くぽってりした感じと高台の慎ましさがかわいいバランスで、白米がとてもおいしそうに見えるんです。」

新井さん:
「それから、カナダ出身の元料理人がデザイナーをされている『KIKUSUMI』さんのおろし金もお気に入り。

佇まいの美しさはもちろん、細かく立ち上がった刃は、柑橘の表皮だけをおろせるし、生姜をきめ細かくすれて香りがよく立つので、最高です。

ちなみに、KIKUSUMIさんは包丁も素晴らしいんですよ。」

 
レモンはいつもチーズ用のグレーターで削っていましたが、やっぱり食材に合った道具があるのですね。
繊細な削り、欲しくなります…!

 

シェフに教わる、料理をもっと楽しむコツ

メニューのマンネリ解消や、新しい食材にチャレンジするときのポイント、子どもとの料理の楽しみ方など…
知っておきたい料理を楽しむコツも教えていただきました。

 

いつもの料理がマンネリ。そんなときは…?

新井さん:
「“ちょい足し” ではなく ”ちょい引き”をおすすめします。

例えば、肉じゃがの醤油をやめて塩だけで仕立ててみたり、サラダはドレッシングではなく、塩とオリーブオイル、ワインビネガーをふるだけにしてみたり…。

つい調味料や出汁などを色々入れてしまうのをこらえて、少し引くこと。

そうすることで料理の味わいがくっきりしたり、食後感が軽くなることもあります。

シンプルな自家製ドレッシングもおすすめ。

皮をむいてざく切りにしたじんじん1/3カップと黒酢1/3カップ、米油1カップ、塩胡椒少々を合わせて、ブレンダーにかけるだけ。
にんじんを玉ねぎにしても◎」

 

味付けのちょい引き、マスターしたくなりました。
ドレッシングのレシピも嬉しい…!

 

子どもとも料理を一緒に楽しむには?

新井さん:
「我が家では、3歳の子どもと、バナナブレッドやプリンなど、かき混ぜる作業が多いお菓子を一緒に作ることが多いですね。

ニョッキやオレッキエッテなどの手打ちパスタも、粘土遊び感覚で楽しめるので、子ども料理教室でも人気のメニューですよ。

仕上がりはあまり気にせず、作業を一緒に楽しむこと、粉だらけにしてもいいように、大きいシートを床に敷いておくことが大事です。笑

料理ではないですが、野菜を一緒に収穫するのもおすすめ。

自分で収穫すると、採った野菜おいしい〜と言って、よく食べてくれるんです。」

 

パパ、ママと一緒につくったという実感が大事なのだそう。

子どもと一緒に、自分もできることを増やせたら、すごく素敵ですよね。

 

買ってみた気になる食材。
使い方が思い浮かばない時は?


▲最近、流通が増えてきたナスタチウム。fra..さんでいただけることも。

 

新井さん:
「新しい食材を使うのは実は得意ではなくて…
でも初めて会った人と同じで、よくよく知れば一気に打ち解けるもの。

いろいろな角度から見てみるようにしています。

焼いて、茹でて、煮て、生で。
香りは、草っぽいかな、土っぽいかな。
どんな形かな、ペーストにしたらどうかな。というふうに。

ずっと頭の片隅に置いておくと、あるタイミングで閃きがありますね。

まずは、似ているものの代わりにしてみるのが、いいかなと思います。」

新井さん:
「あとは、新しい使い方をしてみるのもひとつ。

おすすめは、野菜を調味料にすることです。

刻んだパセリとアンチョビ、酢少々、オリーブオイルで作る『サルサヴェルデ』というイタリアのソースは、ねぎ塩ダレ感覚で、焼いたり茹でたりした肉や野菜に掛けて使えます。

お店でも、ハラペーニョソース(きゅうり・玉ねぎ・ハラペーニョピクルスを刻み合わせて作る)を穴子のフリットに合わせたり。

野菜と酢・塩・オイルでつくる調味料は、簡単で無限に広がります。」

 

バジルを大葉で代用した和風ジェノベーゼのように、定番レシピに代用の素材を使うレシピは身近にもよくありますもんね。

同じ感覚で新しい食材を試してみると、気軽に使いやすいかもしれません。

 


▲新井さんの得意料理のひとつだと言う、手打ちパスタ。
(全粒粉の手打ちオレキエッテ、からすみとブロッコリーのソース)

 

そんな新井さん、最近 お店や個人で新しい取り組みにもチャレンジしているのだそうです。

 

新井さん:
「コロナ渦で多くの方々の生活に影響が出ていると感じています。

私達レストランはいつでも安心して食事がとれて、元気を得られる場所であるよう、改めて、みなさまへのサービスを提供していきたいと思っています。

その1つとして、お店を支えてくださるみなさまに感謝の気持ちを込めて、お菓子をお渡しするイベントをしたり、ナポリのカフェ文化を参考にしてこどもチケット(※)を発行したりと、少し嬉しくて地域が元気になる仕組みを探求しています。」

※ お客さまからの寄付にお店の協力金をのせた割引チケットを店頭に設置し、通りがかりのお子様連れのお客さまにご利用いただく仕組み

 

「また個人としては、NYのシェフ ダン・バーバー氏がはじめた『Kitchen Farming Project』に参加しています。

伝統的な種をつなぐ小規模農家の重要性を訴えるため、シェフたちが自ら畑を耕す世界的プロジェクトです。

私が無農薬で野菜を作ることを通し、今の農業の置かれた状況を知っていただくことをミッションとして、取り組んでいます。」

 

 

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プロフィール


Restaurant fra.. 新井直之さん

シェフ。大学在学中から料理にのめり込み、都内レストランで修行。
イタリア プーリアのおばあちゃん仕込みの手打ちパスタ オレッキエッテをはじめ、素朴な田舎風料理を得意とする。
fraは “〜と〜の間”を意味するイタリア語。
生産者とお客さまの間に立ち、埼玉・東京の生産者から直送された食材をシンプルに料理し、お客さまに旬の味わいを楽しんでいただくことをモットーとしています。

Instagram / HP

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