コラム「知っておきたい器のあれこれ」では、自宅ごはんが増えたみなさまに向けて、食周りのプロたちから日々の食卓に使えるアイデアをおすそ分けしてもらう番外編をお届けしています。
▼第1回目 fromage&food mikoto今井真希さん
▼第2回目 lalafarmtable 奥薗 和子さん
今回お話を伺ったのは、都内在住の器作家 八代 成実さん。
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シンプルなのに、繊細なかたちと色合いをしている器たちは、大人の乙女心をくすぐるデザイン。
彼女のInstagramをよくよく見てみると、素敵な器に盛り付けられた料理には家庭料理が多いことに気づきます。
背伸びをした料理じゃなくても、器使いや盛り付けで、より食事は楽しくなるんだとハッとさせられます。
日々のごはんの話に加えて、そんな器周りのお話もたっぷり伺いました。
我が家の鉄板レシピ
八代さん:
「そんなに頑張らない料理をつくることが多いです。
お気に入りは豆腐丼。
簡単なのに間違いなくおいしくて、食欲の出ない暑い時期でも食べやすいので、夏の定番になっています。」
八代さんの鉄板 豆腐丼のレシピ
豆腐:半丁、白米:一膳、トッピング:野菜や納豆を好きなだけ、ごま油、白だし、醤油
1. 豆腐の水気をしっかり切る。
2. 白米の上に、豆腐を崩して広げ、好きな具材をたっぷり盛り付ける。
きゅうり、トマトなどをベースに、ミョウガや大葉などの香味野菜を。
3. ごま油、白だし、醤油で味付け。
バランスは1:1:1を目安に適当に。
最後にお好みで炒りごまをふっても◎
簡単、栄養たっぷり、でもヘルシーな豆腐丼。
夏の疲れた日にはぴったりそうです。
お気に入りのスパイスや調味料
八代さん:
「桃屋のきざみにんにくとハーブソルトが好きです。
きざみにんにくは、ほとんどの料理に使うので、あっという間に一瓶なくなります…。
お肉でも野菜でも、これで下味をつけておけばOKみたいに思っていて、すごく頼もしい。
バテ気味の時は、生姜と合わせてスープにもします。
ハーブソルトは友人のフランス土産のいただきもの。
ハーブが効いていて、これをふるだけで味に深みがでるし、全体が整うんです。
凝った料理や味付けは苦手で、ただ焼くだけなどのシンプルな料理が好きなので、すごく重宝しています。
素材そのままの良さを引き立ててくれるような、信頼できる好きな調味料を持っておくことが、こだわりかもしれません。」
きざみにんにくが夢の調味料な気がしてきました…!
スープは、みじん切りにした生姜ときざみにんにくを軽く炒め、野菜を加えて油をまわし、水を注いで沸騰させたら具材に火を通して完成(味付けは塩胡椒/コンソメ/中華だしをお好みで足す)だそう。
手軽で元気になるレシピ、気になります…!
食にまつわるマイブーム
八代さん:
「食パンが好きで、いろいろなパン屋さんの食パンを食べ比べています。
小麦の味が好きなので、基本的には軽くトーストして何もつけずに食べるのですが、ピーナッツバターを塗ったり、アレンジトーストにすることもあります。
グリルズッキーニをのせたアレンジトーストがマイブームです。
パンそのものを味わう焼き加減は、ほんのり焦げ目がつくくらい。
生地の味と食感って、お店ごとに全然違うので、好みのお店を探すのが楽しいんです。」
パンそのものの味を楽しむって、なんだか新鮮。
生地の味の違いがわかるようになったら、パンライフがもっと充実しそうですね。
次は、器のプロの愛用品が気になって、ご自身の器も含め、いくつかお気に入りを教えていただきました。
お気に入りの器や道具
八代さん:
「自分の器だとlow bowl、中村桜士さんの木工のカトラリー、ボダムのフレンチプレス、の3つです。」
「色鮮やかな野菜がもりもりのったような“オシャレなカフェのご褒美朝食”をイメージして作ったlow bowlは、我ながら使いやすいなと思っています。
深すぎないので、いろんな料理が似合うんです。
シリアルにフルーツをたっぷり盛ってもいいし、カレーやパスタなどの一人分のごはん、汁気のある和のおかずにも。」
八代さん:
「中村桜士さんは知り合いの陶芸作家さんなのですが、いろいろなものづくりに長けている方で、数年前に購入した木のカトラリーを愛用しています。
バターやジャムに使っているのですが、シンプルでシャープなかたちは使いやすく、添えるだけで絵になって、美しいなと思います。」
八代さん:
「前に働いていた珈琲店では、フレンチプレスでコーヒーを提供していて、そこで淹れ方を教えていただいたのをきっかけに、ボダムのフレンチプレスを愛用しています。
コーヒーが苦手だったけど、“淹れ方や好みの豆を知れば、おいしく飲める”ことがわかり、今は珈琲を淹れる工程やその時間もすごく好きです。
最近はミルクを合わせて、アイスオレに。
普段より少ない湯量で抽出した、濃いコーヒーを使うのがおすすめです。」
カトラリーが違うと、全体のイメージも結構違ってきます。
いつも使っているもの以外にひとつバリエーションを増やすと、もっと豊かなコーディネートを楽しめるかもしれません。
SNSで見かける八代さんの器使いはすごく素敵。
今回、普段から意識しているポイントも教えていただきました。
器選びと盛り付けのコツ
八代さん:
「器選びや料理の盛り付けのとき、余白を残しておくことを意識しています。
お皿いっぱいに盛り付けるよりも、少し余白が残っているほうが、上品な美しさがあるんじゃないかなと思っています。
あとは、ブラックペッパーをふったり、ハーブを添えるなどのひと手間を加えること。
正直、味への影響はそこまでないかもしれないけど(笑)、これで見え方が違うので、自分の気分を上げるためにも必要だと思っています。
写真を撮るときは、俯瞰でみたときの色のバランスや立体感を意識します。
土台部分を盛り付けて、差し色はこれでー…と考えていて、デザインしている感覚に近いかもしれません。」
確かに、余白が多いと上品なひと皿になりますよね。
スペシャルな日のご飯なら、さらに思い切った余白使いをしたり…
なんて、楽しいイメージが広がります…!
もっと自由に器を使うなら?
こんな使いかたも。
八代さん:
「フラットなお皿をアクセサリートレーにしたり、小さめのカップやミルクピッチャーに花を活けたり、食のための器でも食以外の用途に使うこともあります。
“食器”としてつくられているものも、それにこだわらずいろんなシーンで使いたいと思っていて、作り手としても受け取った方には自由に使ってもらえるのが嬉しいなと思っています。」
シンプルなプレートに、シンプルなアクセサリーがお似合いですね。
自分のフィルターを通して選んだものは、用途が違っていても似合わせやすいのかもしれません。
職業柄、作家さんは器を多く所有しているはず。
ということで、収納のコツも教えていただきました。
うつわの収納のコツ
八代さん:
「何がどこにあるかを把握できるように工夫しています。
できれば見える範囲に全てを収めたいけれど、そうもいかないので、時々食器棚全体を新鮮な目でチェックします。
そのとき、これはあまり使ってないなと思うものがあれば、後ろと手前を入れ替えてまんべんなく使うようにしたり、時には友人にあげて数を減らしたりしています。」
把握しきれないものは、出番が少なくなってしまいがち。
たまに棚をのぞいてみることも大切ですね。
そんな八代さん、WEBでの器の販売を始めたのだそうです。
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八代さん:
「リアルでの展示会を行うのが難しい状況が続いているので、オンラインでの受注制作をはじめました。
なかなか展示会には行きづらいお客さまにも、器を届けられるきっかけになったと思うので、定期的な受注制作は続けていきたいなと思っています。
また、こんな時だからこその新しい取り組みとして、世田谷区 宮の坂にあるコンフィズリー 『iro…』さんとギフトセットを作っています。
おうち時間に、“器”と“おいしいもの”を、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。」
プレゼントに喜ばれそうな、美しいギフトセット。
お菓子が好きなあの人に、ぜひ。
プロフィール
narumiyashiro ceramic works
八代 成実さん
埼玉県出身。陶芸家。
ものづくりを仕事にしたいと思い、会社員から陶芸の道に。
現在は、都内の工房を拠点に活動中。
使いやすさと、手に取るたび心が潤う美しさを兼ね備えたものを目指して、日常に寄り添う陶の食器、花器、照明等を制作しています。