生まれ故郷、今住んでいる場所、ゆかりのある土地…
それぞれの人目線で、様々なお国の魅力を紹介していく記事リレー「お国じまん」。
第13回目のバトンを受け取りました、副編集長のともみです。
以前『避暑地「日光」で過ごす夏の旅』をお国じまんさせていただいたのですが、今回は上京するまで生まれ育った栃木県の宇都宮市をガイドさせていただこうと思います。
実は今回、宇都宮で有名な石材「大谷石(おおやいし)」の文化が日本遺産に選ばれたことをきっかけに、NEXTWEEKENDで紹介してほしいとラブコールを頂いたんです。
いやーこれはすごく嬉しい。
大谷石はもはや当たり前の存在というくらい身近だったので、コラボできる日が来るとは。
大谷石とは、宇都宮の北西部、大谷という地域で産出される石材。
江戸時代から本格的に採掘されて、明治以降は建材として全国の街づくりを支えてきました。
全国に知れ渡ったきっかけは、関東大震災に耐えたこと。
その耐火耐震性や加工のしやすさが評価され、都内でも旧帝国ホテルや築地本願寺、国立競技場など、有名な建築に使用されてきた歴史があるんです。
(今でも都内のレストランなどで大谷石を発見するとちょっと嬉しくなる私。)
もちろん産地である宇都宮の中では、この大谷石がいたるところに使われています。
▲昔からある建築物はもちろん、カフェやレストラン、個人宅の自宅の塀や表札部分にも。
味があって、かっこいい大谷石!
海の街でも山の街でもない宇都宮ですが、今思えば「石の街」だったのかも と言っても過言ではないくらい、大谷石を使いこなす文化が根付いている街なんですよね。
そんな古くから受け継がれる、石を掘って自由自在に使う文化自体が、日本遺産になったというわけです。
…と、なんだか石博士みたいなお国じまんのスタートとなりましたが。
今回はそんな「大谷石文化」というキーワードを中心にしつつ、私が好きなスポットをご紹介したいと思います。
映画の中みたいな
非日常の空間に酔いしれる
まずご紹介したいのが、大谷石の採掘場跡につくられたミュージアム。
入り口はごく普通なんですが、地下へ続く階段を降りていくと、一気に別世界に足を踏み入れた感覚に。
深さ30m、広さ2万㎡に及ぶ、巨大な空間が広がります(野球場がひとつすっぽり入ってしまうくらいの大きさ)。
まるでインディ・ジョーンズの世界…!
洞窟っぽいのですが、人工的に石が掘られてできた空間なので、まっすぐな石柱が整然と並んでいてスタイリッシュ。
江戸時代から昭和中頃までは採掘は人の手作業で、石1本(80kgくらい)をツルハシで4千回叩いて削り出し、背負って運んでいたそう…!
そんなことを想像しながら見る壮大な景色は、歴史とエネルギーを感じます。
今ではプロジェクションマッピングが行われたり、アート作品なども並んでいるので、ちょっと非日常な景色が見たくなった時にもオススメ。
小さい頃はここに来るのがなんだか異国に訪れたみたいでドキドキしたなあ。
ちなみにここは冷蔵庫の中みたいにひんやりしているので、夏でも上着必須ですよ。
大谷資料館
宇都宮市大谷町909
028-652-1232
石の里で、のんびりお散歩
大谷資料館に行ったら、その周辺のお散歩やお土産探しも楽しいので是非。
カフェ&セレクトショップROCKSIDE MARKETでは、大谷石のおしゃれなインテリアグッズが販売されていて、思わず何か欲しくなっちゃうはず。
私も先日訪れた時に大谷石のコースターを買っちゃいました。
(茶器を置いたり、小皿を並べたり、何かと便利。)
そのあとは、大谷石で造られた平和観音さまにご挨拶しながら、のんびりと大谷公園を散歩。
この公園も石の柱がそびえたつ、なかなか独特な雰囲気ですよ。
公園を通り抜けたら、THE STANDARD BAKERSで翌日の朝ごはんをゲット。
ここは目移りするくらい美味しそうなパンが並んでいるベーカリーです。
(※2019年11月末まで休業・営業再開未定なので、訪れる場合は事前にご確認を)
蔵作りのレストランで、
地元食材を味わう
散歩のあとは、地元食材を使った食事で一息。
せっかく大谷石のルーツも知ったあとなので、今回は石の蔵造りのレストランをご紹介します。
名前はそのまんま「石の蔵」。
もともとは倉庫だった場所をリノベーションして造られた、重厚感のあるモダンな空間。
大谷石って白い石の中に「ミソ」と呼ばれる茶色い穴があって、ほっとする温かみもあるのが魅力なんですよね。
宇都宮は、こういう石蔵がカフェやレストランになっていることがすごく多いです。
資料館で石が掘り出された歴史を学んだ後に、こうして実際に使われている場所を見ると、街の文化を改めて感じて感慨深い…。
(書いてるうちに石への愛がどんどん深まっている)
石の蔵のランチの嬉しいところは、地元食材が使われた前菜とデザートがビュッフェ形式で楽しめて、どれもちゃんと美味しいこと。
選べるメインディッシュとあわせて、かなり満足感が味わえるはず。
レストランの奥にはギャラリーやラウンジもありますよ。
地元の作家さんの素敵な器が並んでいるので、お気に入りに出会ったら自分へのお土産に是非。
石の蔵
宇都宮市東塙田2-8-8
028-622-5488
夜だったら、フランス郷土料理とワインを堪能できるNaomi Ogakiさんもオススメです。
駅からタクシーでワンメーターくらいなので、帰る前にも行きやすくて◎
あ、ここも外観は大谷石ですね。
(本当に、この街は気付くと大谷石!)
パテアンクルート(パテのパイ包み)は毎回必ず頼んじゃう、お店のアイドル。
レトロな建築を巡ってみる
大谷石にまつわるスポットはまだまだ沢山あるのですが、好きな場所をもうひとつだけご紹介します。
建築好きな方にオススメしたい石の教会「カトリック松が峰教会」です。
全面に大谷石が貼られている、重厚感のある独特な雰囲気の教会。
昭和初期に建てられ、国の登録有形文化財にも登録されています。
いつも物静かで、ステンドグラスから入ってくる光は柔らかで、心落ち着く場所です。
出入りは自由で、パイプオルガンが聴ける日も!
松が峰教会に来たら、近くにあるマツガミネコーヒービルヂングというカフェにも是非。
コーヒーや焼き菓子も美味しく、こじんまりとしていて落ち着く空間です。
カトリック松が峰教会
宇都宮市松が峰1-1-5
カクテルの街でほろ酔う
最後はひとネタ。
宇都宮といえば「餃子の街」というイメージを抱いている方も多いと思うのですが、本格的なバーが結構多くて、「カクテルの街」という呼び名もあったり。
せっかくなので帰る前に一杯、お酒を嗜んでいくのはいかがですか。
私は地元を離れて10年くらい経つので、帰省したときにバーテンダーさんとのお喋りで地元情報をアップデートできることもあって、なかなか楽しいです。
写真は最近訪れた、BAR CHAMONIX(バー シャーモニー)さん。
頼んだカクテルにはさっと薔薇のエディブルフラワーを添えてくれて、乙女な一杯に。
スタンダードなカクテルを頼んでも、ひとつひとつ深い知識とこだわりを添えて、新しい顔を見せてくれますよ。
大谷石文化が日本遺産に選ばれたことをきっかけにお国じまんさせていただいた、ややニッチな宇都宮の旅。
日帰りのんびりプランだと、ざっとこんな感じです…!
紹介できた場所はほんの一部ですが、街のいたるところに大谷石が使われているので、宇都宮に来るチャンスがあれば「あ、これがあの石か」なんて、隠れミッキーを探すような気持ちで注目して見てもらえたら嬉しいです。
日本各地域の文化財を広く発信する取り組みのひとつである、日本遺産。
日本にはストーリーを持つ文化が沢山あって、それを知ってから街をのぞくと全然違う景色が広がっているはず。
自分のよく知ったお国だって、改めてそういう視点で見てみると、新しい魅力に出会えるかもしれませんね。
東京からは新幹線で50分で来れちゃう宇都宮。
ぜひ気軽な週末旅で訪れてみてくださいね。
提供元:栃木県宇都宮市