毎日の食卓やお弁当づくり、記念日のとっておき料理。
いつだって生活の中心にある「キッチン」は、その家族“らしさ”が見える場所です。
独自のスタイルがある方々の、キッチンにまつわる工夫やこだわりを拝見する連載「わが家のキッチン、暮らしのかたち」がスタート。
第一回目は、NEXTWEEKEND代表・村上萌の母、村上桃代さん。
「次の週末の理想の生活」を日々提案しているNEXTWEEKENDですが、
季節の楽しみと小さな工夫を大切にするブランドがはじまったルーツは、村上萌の生まれ育った家庭にあります。
そんなNEXTWEEKENDの母的存在(!?)、桃代さんのキッチンにスポットを当てて、お話を伺ってきました。
▲左:村上桃代さん 右:村上萌
玄関のドアを開けると、ワンフロアのリビングとひと続きの開放的なキッチン。
ぴかぴかの笑顔で出迎えてくれた桃代さん。
昨年建てた一軒家には、友人や家族など、毎日誰かが訪れてきます。
ひとつひとつに愛あるエピソードを持つキッチンツールや植物が並び、風通しの良いキッチンは、いつだって笑い声と共にあるオープンマインドな彼女そのものでした。
▲料理を作っていても「玄関から顔が見える」位置に作業スペースを設置。
サイドにあるドアと自然光がたっぷり入る大きな窓は、屋外のウッドデッキにつながっており、ピクニック気分で朝食を取ることも多い。
「生涯好き」のルーツが詰まった台所
「これ、かわいいでしょ?」と宝物を見せるように桃代さんが出したのは、ケロッグのヴィンテージマグ。
最近、少しずつ集めるのがマイブームだそう。
▲息子さんが昔使っていたマグをきっかけに、少しずつ集めているケロッグの食器。
「古き良きアメリカのキャラクターアイテムって、見ているだけで朝から元気がもらえるんです」
▲写真中央の瓶ふたつは、桃代さんが19歳の時から実家にあったもの。
煎りゴマを入れて今でも愛用。
真っ赤なボウルやミニ泡立器など、桃代さんの母の代から受け継いだマイヴィンテージは、家の至る所に。
所々に効いたギンガムチェック柄、どこか懐かしい絵柄のキッチングッズ、丁寧に活けられた小さな花。
まるで絵本の世界のような空間は、一貫した彼女の「好き」で統一されています。
桃代さん:
「子供の頃、アメリカ在住の叔母が雑貨や食料品を定期的に送ってくれたんです。
アメリカンな可愛い絵柄のそれらにワクワクして、家の冷蔵庫にもアメリカのアイスクリームが常にあったりして…
私の好きなスタイルはその時も今も変わっていないですね。
家のアクセントになっているセージグリーンは、生まれ育った実家の壁や窓枠などに塗られていた、私にとって馴染みのある色。
台所に自然光がたっぷり入る作りにしたのも、昔住んでいた家のイメージを再現しました。
母から受け継いだものに、幼少から憧れだったものを自己流にミックスして。
台所は生活に欠かせない場所だからこそ、お気に入りに囲まれて楽しく過ごそうって決めています」
▲昔から、雑誌の気に入ったページを切っては貼って、今でいうPinterestのようにスクラップ収集していたそう。
少女の頃から、桃代さんの夢見るキッチンのかたちはぶれていない。
季節の移ろいに合わせてキッチンを衣替え
▲花器や小物入れ、オイル類など、
4月のテーマカラー・快活なイエローがキッチンに彩りを添える。
▲5月に近づいていた撮影時は、初夏を感じさせる淡いグリーンの食器も並んで。
「もう少し前はクリーム系の色の器が混じっていたの」と桃代さん。
敏感な色彩センスに心が動かされる。
モノだけではなく季節を食卓に取り入れるというルールも、桃代さんの母の影響だそう。
桃代さん:
「我が家では、花瓶からやかん、棚にある食器もすべて、季節ごとにガラリと色を変えるんです。
今(撮影時は4月後半)はイエローとエメラルドグリーンが中心。
2月はピンク系、夏が近づくとブルー、秋に入るとオレンジ系、12月は赤、年明けた1月は新しい気持ちになれる白…と、月ごとの(テーマカラーの食器を入れた)ボックスがあるんです。
お客さんも来るたびに新鮮でしょ?
庭にある四季折々の植物をカットして飾ったりするのも、季節やイベントをとっても大切にしていた母がしていたこと。
私にとっては毎日の習慣です」
“通年して使うもの”という考えになりがちなキッチン。
季節に応じたテーマカラーを決めてテーブルウェアを総入れ替えするという新鮮な発想は、食卓の景色に変化をもたらし、気持ちを豊かにしてくれる、素敵なアイディアです。
ひとつひとつディテールを大事にしたり、手間をかけてみることが喜びに変わっていく。
それが家族にも浸透していることは、今のNEXTWEEKENDを見れば納得です。
桃代さん:
「食卓に飾る花は、娘の萌が庭や野原から摘んできてくれたものを活けていました。
子供だった萌は、それが嬉しかったらしく自信になったみたい。
“あの時、私が摘んだ花を褒めてもらったことが、今の私のベースになっていると思う”と後に話してくれました」
生活感ある日用品はひと手間アレンジ
▲コーヒーの瓶を入れ替えたり(写真左手前)、お孫さんの哺乳瓶を海外のシリアルの箱に入れて置いたり(写真奥)。
パッケージが可愛いアルミホイル(写真右)は、近所の「オーサムストア」で見つけたもの。
桃代さん:
「実用的で生活感が出てしまう日用品は、コストコなどで海外パッケージのものを買うことが多いです。
可愛いパッケージを見つけたら友人たちの分までまとめ買い。
どうしても味気ないデザインのものは、別の箱に入れ直しています。
ちょっぴり手間はかかるけど、愛着持てて楽しいでしょ」
その言葉通り、無骨でリアルな見た目もチャーミングに早変わり。
なんでも“お気に入り”に変えてしまう、ハッピーな暮らしの秘訣は細部にまで徹底しています。
▲キッチンから続くウッドデッキのバルコニーには、バジルや山椒などハーブが点在。
空き缶や麻バッグに入れて、桃代流の愛情を注いでいる。
にぎわうお家ならではの特製レシピ
▲食パン一斤を使ったサンドイッチケーキは、桃代さんが20代の時から作られている村上家の定番。
アボカドやきゅうり、サーモン、クリームチーズなどが層になった美しい断面が食欲をそそる。
レシピはこちらから
桃代さん:
「大皿メニューは我が家の定番。
昔からよく作るサンドイッチケーキは、大勢でもシェアしやすくて、一品あると特別感も出るんですよ。
天気の良い今日は、マーマレードやレモンの柑橘、ディルなどのハーブを足して、爽やかな初夏バージョンにしてみました。
隣の家に住む姪とは、お互い作ったおかずを交換するのですが、相談もせずにふしぎと献立がうまくマッチすることが多いんです。
私がガパオを作ったら、彼女はタイサラダを作っていたり(笑)」
▲茗荷やツナを混ぜた酢飯に、ホタテや葉野菜を乗せたサラダ寿司は、オリーブの酸味がアクセント。
味がしっとり染み込んだ煮豚と一緒に。レシピは、持ち寄り料理から友達に教わったり教えたり。
▲結婚前に習っていたフランス料理のレシピノート(写真左)は、写真を貼って文字を書きこみ、実際よく作ったそう。
絵本の中に出てくるメニューを集めたレシピ集、数十年前の料理雑誌など、ずっと大切にしている。
大好きな人たちとつながる場所
▲「大阪に住んでいる娘の萌が、仕事で月の半分は孫を連れて東京に帰省するので、家はいつも賑やかなんです」。
食卓や季節を大切にするスピリットは、母から娘へ代々受け継がれている。
▲ドアを飾る古布を使ったガーランドは、近所の友人と一緒に集ってみんなで作ったもの。
冷蔵庫に貼ってある、孫・杏ちゃんが家族を描いたというイラスト(右)にもほっこり。
ひとつひとつの物にこだわりがあるのにも関わらず、「台所は私一人ではなく、自由にみんなが過ごせる場所」という桃代さん。
そのオープンなマインドは、ダイニングとリビングとひと続きの開放的なキッチンに反映されています。
桃代さん:
「毎日友人が来ては、食べ物を持ち寄ってワイワイ集まるので、誰でも冷蔵庫を開けていいし、好きな場所でお酒を飲んだり、外のデッキでランチをしたり…
キッチンは単なる調理場ではなく、みんなと楽しむ場所。
遠くに住む家族も、近所に住む友人たちも、SNSで知り合った方もふらっと来てくれるんですよ、うふふ」
利便性よりも、“ときめくもの、大切に受け継いでいくこと”。
それが、人生を豊かに過ごすエッセンスになることを、感覚でわかっている桃代さん。
そんな彼女の心地いいキッチンには、明日も誰かが集っているはずです。
Text:Hitomi Takahashi Edit:NEXTWEEKEND