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とにかく何を食べても美味しいこの季節。

今月は、いつもより少しだけ手の込んだとっておきのおつまみと共に、食いしん坊な映画ナイトにぴったりの作品を選んでみました。

『大統領の料理人』


がんばる勇気をもらいたい夜に

大統領官邸史上初の、女性プライベートシェフの実話の物語。
フランスの片田舎で小さなレストランを営む女性、オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)は、一度名刺交換をしたことがあるだけのロブションからの推薦で、ある日突然、ミッテラン大統領の専属料理人に抜擢されることに。
堅苦しいメニューや規律、男性シェフの嫉妬と戦いながらも、本当に美味しい素朴な家庭料理を作り続けるうちに、大統領から厚い信頼を得るようになるものの、大統領の健康管理や経費削減により、だんだんと自由に料理を作れなくなっていって……、というストーリーです。

まず、とにかく主人公の作る料理が美味しそう!
大統領官邸(エリゼ宮)で大統領のために作る料理も、大統領の料理人を辞めて自分をリセットするために行った、南極のフランス観測基地での料理も、一切手を抜くことなく、素材と工程にこだわった料理の数々。
料理って本当に人を幸せにするんだな、と改めて思いました。

それから宮廷料理人たちの、美味しいかどうかよりも、規律を守ることを最優先にする姿勢は、フランスでも日本でも、会社でも大統領官邸のキッチンでも、こういう体裁ばかりを気にして本質が見えていない人たちってどこにでもいるんだなぁと思ってしまいました。
そんな逆境の中、大統領にただ美味しい料理を食べてもらいたい、という想いだけで奮闘する彼女の姿はとても勇敢で、本質をとらえていて、企業で働いているとどうしても理不尽なことも色々あるけれど、諦めずにがんばろうと思えます。

南極をランニングする彼女の表情も、凛としていてとても好きです。

『大統領の料理人』
監督: クリスチャン・ヴァンサン
出演: カドリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン
発売元:ギャガ
販売元:ポニーキャニオン
DVD3,800円+税、Blu-ray4,700円+税
Les Saveurs du Palais (C)2012 -Armada Films- Vendome Production -Wild Bunch- France 2 Cinema

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

さわやかな気分で眠りたい夜に

ロサンゼルスの一流レストランで総料理長を務めるカール(ジョン・ファヴロー)。
ある日大物料理評論家の来店に自分の創作料理で挑もうとするものの、レストランのオーナーの指示に逆らえず、オーソドックスなメニューを出すことに。
結果、評論家からは保守的な姿勢と料理を酷評されてしまいます。
カールは慣れないtwitterでうっかり評論家に反論したところ、炎上してしまった上に、再度来店した評論家に怒りを爆発させてしまった動画がYouTubeで拡散され、レストランも解雇。
炎上が原因で他のレストランからも採用を断られてしまい……、というストーリーです。

SNSでクビになったり、SNSでの宣伝効果で再起したり、とても今の時代っぽい内容の作品です。
この作品も、『大統領の料理人』と同様、保守的なオーナーに反発したシェフが主人公です。
料理みたいなクリエイティブな仕事は、仕事と割り切ってやるのが難しいだろうな、と改めて思ってしまいました。

突如無職になってしまったカールは、色々あってフードトラックを始めるのですが、かつての職場の同僚や息子も仲間になって、ラストは後味のいい終わり方なのでお楽しみに。
カールの元恋人(愛人?)のスカーレット・ヨハンソンがスパゲティを食べるシーンがなんともセクシーで、食べるという行為の色気を改めて感じてしまいました。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
監督:ジョン・ファヴロー
出演: ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ
発売中
Blu-ray 1,800円+税、DVD 1,280円+税
発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

 

『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』

知らない世界を覗き見してみたい夜に

世界一予約がとれないレストランとして有名だった、スペインのカタルーニャ地方にある三ツ星レストラン「エル・ブリ」に潜入したドキュメンタリー映画。
カリスマオーナーシェフ、フェラン率いるレストラン「エル・ブリ」は、世界中から予約がひっきりなしにくる伝説の店。
彼らは毎年半年間休業し、シェフたちはバルセロナの研究用アトリエで来期用の新メニュー開発に没頭。斬新な一皿が生み出されるまでの悩みや苦しみを淡々と追った作品です。

みかんと氷を一緒に食べる料理とか、水のゼリーとか、美味しいとか美味しくない以前に、どんな味がするのか全然想像できない料理が次々に出てきて、いろんな意味でおもしろいです。
必ず前年を上回るメニューを開発しなければならないプレッシャーは想像を絶するものだろうな……。

料理というよりは実験のようで、システマティックに機械のように動くことが求められているエル・ブリの料理人たちですが、新メニューお披露目の初日が無事終わった夜、レストランの外の階段で座りこみながら、「あーほんと今日疲れたね」みたいな何気ない会話をするシーンがすごく人間らしくて、ほっとしました。

『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』
監督: ゲレオン・ヴェツェル
出演: フェラン・アドリア、オリオール・カストロ
DVD4,800円+税
発売元:ドマ/スターサンズ
販売元:KADOKAWA

おまけ:古本屋さんやります

明日はいよいよ雑誌最新号の発売を記念したイベント「神宮外苑Weekend Marche」の日。

私も古本屋さん(全部私物の本です)を出店させてもらうことになりました、ドキドキ……。

ご希望の方にはハーブや漢方薬のように、今の気分をお伺いして本をおすすめする、本の処方箋みたいなこともやってみたいと思っていますので、よかったらぜひ気軽にお声掛けください。
(買ってくださった方には薬の袋みたいな袋に本を入れてお渡ししようと思っています)

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