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「エモい」という言葉を日常的に使うかどうかは置いておいても、その言葉の意味を海外の方に説明する立場になったとしたら…、自分はなんと説明するだろう。

5年ほど前から若者を中心に使われるようになった(音楽業界では1980年代から使われていたそうだけれど)この言葉の語源には諸説あって、英語の「emotional」に加えて、古語の「えもいはれぬ」なんてものもあるらしい。

いずれにしても、言葉にできない感情に名前がついたのだから説明が簡単でないことは確か。

ただイメージする描写はおそらく多くの人が同じで、そこには “青春”“懐かしさ”“刹那的”なんかが含まれている。

そう、まったく新しいものに出会った時にはこの言葉は登場することがなく、“エモい”を使っている人の背景には、必ず何かしらの“追憶”が存在する。

だから、目の前の光景と追憶に通ずるところを見つけた時に、悲しいわけでも嬉しいわけでもなく、時間の経過や、心の成長(あるいは衰退も含めて)を感じて、この表現が出てくる。

そして、この言葉をSNSで検索した時にセットで使われている単語のトップ5に「夏」が入っているという事実もまた納得。

−果てしなく長い休みの中で、沢山の不思議に出会った小学生の夏。
−コンプレックスやアイデンティティと向き合った中学生の夏。
−青春や背伸び、自信と不安のはざまを生きた高校生の夏。

子どもから大人になる過程で、日本の夏は感情を揺さぶられる機会が多いので、私たちはこの季節になるとエモさを感じるのかもしれない。

そして無意識のうちに自分の追憶をなぞりながら、今日の選択をしていたりもする。

縁側で食べるフルーツ、旅行の夜のトランプ、川に向かう抜け道、街が夜に包まれていく時間、浴衣を着て待ち合わせる神社の入り口、マクドナルドの袋を持って向かう海。

子育てをしていたってじゅうぶんにエモさを感じるのは、これまで積み重ねてきた何回分もの夏があるから。

エモさの源が青春時代で、私たちがみな追憶をなぞっていたとしても、間違いなく新しい夏の思い出はそこに塗り重ねられていく。

だから、今年の夏がいつか追憶になる日に向けて、やっぱり今年もなぞっていけばいいんだと思う。

そして”エモい”を感じた時に、自分はかつてのどの瞬間の引き出しを開けたのか、少し考えてみると一層楽しめるかもしれない。

7月のNEXTWEEKENDの月間テーマは「夏のはじめに思うこと
SNSのハッシュタグは #夏夜日記

明日経験することだっていつか必ず追憶へと変わっていくから。

それぞれにつれづれなる夏夜日記を楽しめる時間になりますように。

 

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