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独自のスタイルがある方々の、キッチンにまつわる工夫やこだわりを拝見する連載「わが家のキッチン、暮らしのかたち」。

3回目は、プロップスタイリストとして活躍し、フォトスタリンググッズのショップ「&MERCI」のオーナーを務める、つがねゆきこさんのご自宅へ。

5歳の息子さん、2歳の娘さんとの時間を何より大切にと、週末や季節ごとのイベント、そして日々のささいなことも一緒に楽しむ。

SNSで発信される、そんな様子に魅了され、暮らしのアイディアを聞きに行ってきました。

 

雑然としやすいキッチン周りですが、日用品の選び方をはじめ、暮らしにまつわるセンスは、さすがスタイリスト。

印象的なグリーンの壁に、木の風合いやアンティークの器などがマッチし、くつろいだ空気を醸し出しています。

 

子どもの頃から器の大切さを

迎えてくれたのは、つがねゆきこさんと、2歳の娘さん・なつめちゃん。

つがねさんの纏う柔らかな空気と、なつめちゃんの真っ直ぐでキラキラな瞳に、取材スタッフの顔もほころんでしまう。

 

幼いながらも上手に磁器やガラスの器で食事をするなつめちゃんが印象的でした。


▲パリやアメリカの蚤の市で見つけたオールドパイレックスの器。
イイホシユミコ ポーセリンの平皿も、子どもたちのお気に入り。

 

 

つがねさん:
「離乳食の時期から今に到るまで、子ども専用の器は特に購入していません。

自分でスプーンを使って食べるようになってからは、海外のマーケットで買ったオールドパイレックスの器が活躍。

厚みも重さもあるので、ひっくり返すこともなく安定して食べやすそう。

プラスチック食器も便利かもしれませんが、“落としたら壊れる”ということを本人が自覚するためにも、我が家ではこのスタイルが定着しました。

でも、パイレックスは頑丈なので多少のことでは割れないんですよね。毎日ガンガン使っています」

 

一つのものをずっと使い続ける尊さや、たとえ壊れたとしても「次こそ大切にしよう」と気持ちが芽生えてくれれば…。

母から子どもへ、食器を通じて伝えようとする思いは、大事そうにグラスを持ってゼリーを食べる娘さんの姿にきちんと受け継がれているように見えました。


▲自家製の梅寒天ゼリーを食べる娘・なつめちゃん。
ガラスの器は、沖縄のガラス作家・おおやぶみよさん作。
「形やサイズが豊富なWECKも色々揃えて愛用しています」

 

理由あって選ばれたキッチングッズ

つがねさんのお眼鏡にかなった“本当に使える”キッチングッズは、毎日フル回転。

 

つがねさん:
「ドイツ生まれのヘリオス魔法瓶は、食卓の必需品。

朝沸かしたお湯が夜まで熱々なので入れ替え要らずで、乳児用のミルクを作る際にも活躍しました。

今では、あったかいルイボスティーを入れたり、夏には氷を入れて冷たくしたり。

おかげで、何度も冷蔵庫を開け閉めすることがなくなりました」

 


▲スタッシャーのSサイズは、子ども用の持ち歩きおやつ(今日はバナナ!)入れに。
Mサイズはトラベルグッズ、Lは下準備した野菜を入れるなど、幅広い用途で使用。

 

つがねさん:
「最近のヒットだと、このスタッシャーの保存袋がおすすめ。
耐久性のあるシリコン製で、約3000回は繰り返し使える優れもの。

しっかりと厚みと柔軟性があって、レンジ・オーブン・低温調理と幅広く使えて、トラベルグッズなどの台所以外の収納にも役立っています。
今後も買い足す予定です」

 

心と時間のゆとりを作ってくれる、いわばキッチンの頼れる相棒を見つけるのが上手なつがねさん。

「それでも、やっぱりデザインが気に入っていないと使わなくなってしまうので」と、日常的に使うものこそ本当に心から惹かれるものを、というポリシーがどのアイテムにも一貫して見てとれます。

 

視覚も機能もこだわるDIY収納

キッチンの中で心地よく過ごせるよう、つがねさん自身が機能性を求めて手を加えた収納は、視覚美ともイコール。

つがねさん:
「白のローシェルフは、もともとガラス戸だったんです。

子どもが産まれてから、透明なガラスが割れてしまいそうで危険だなと思い、ガラス部分を白のベニヤ板に付け替えました。

右半分は子どもが触れてもいい頑丈な器やカラフルなグラスを入れています。

“あっち(左側)はママの大切な器が入っているからごめんね。でもこっちは自由にしていいよ”と伝えて。

大切な器と同じシェルフに入っているし、どれもおもちゃではない本物の器だから子どもも嬉しいようで、右のコーナーで遊んでくれています」

 

既成品もシチュエーションに合わせて自由にリメイクするのがつがねさん流。


▲ゴミ箱の隣は、ビニール袋のまま引っ掛けられる作りにし、すぐ溜まってしまうプラスチックゴミなどを分別。

 

つがねさん:
「作業台の下に、ゴミ箱を置くスペースがあるのですが、市販のゴミ箱がすっぽり隠れるようにカスタマイズしました。

すのこを組み合わせて箱状にして、出し入れしやすいようキャスターを付け、ゴミ箱の横はポリ袋をそのままかける仕様に。

木製なので他の要素とも相性いいし、使い勝手も良いですね」

ちょっとした発想で、見た目も良くて効率的。

スタイリストと母、2つの顔を持ち合わせるつがねさんならではの空間づくりのアイディアです。

 

ときめく空間へと日々更新中

生活してから改良しようと、時にはプロの手を借りることもあるそう。

つがねさん:
「飾り棚を付け替えや、ヘリンボーン材の壁面は、プロの力をお借りしました。

お願いしたのはアンティーク家具修復士のEIMOKUさん。

古木を使った風合いのある棚は、作家さんの器やアンティークものにもマッチしていて、以前よりもさらにキッチンが大好きになりました。

子供の手が届かないよう、家でも仕事でも使うお気に入りの器たちを中心に置いています(笑)」

 



▲お気に入りの器を飾る収納棚。
引っ越し当初は白だったというキッチンの壁は、EIMOKUさんに塗ってもらい深みのあるピーコックグリーンの色壁に。
温かみのある個性を感じさせる。

 


▲表情のある繊細な彩りに目が奪われる、陶芸家・大渕由香利さんの器。
ついつい白い器に頼りがちなコーディネートに、美しい色のアクセントを加えて、食卓の景色に変化をつけるのは真似したいポイント。

 

家のインテリアは、一度決めたらそのままにしてしまいがち。

でも、実際に使ってみると、予想外の不便さに気づいたり、好みが変わったりして、本来くつろげるはずの家がストレスになることもあります。

つがねさんのように、暮らしに合わせて柔軟に変化させていく姿勢、心地よくするためのDIYは、自分らしく暮らすための手段になります。

 


▲大きな袋からのぞくクマの耳。
クスッと笑みがこぼれるそうになる、チャーミングなぬいぐるみ収納アイディア。


▲「アンティークショップ“North6antiques”にあったアンティークのヘリンボーン材をEIMOKUさんが見つけてくれ即決しました」
キッチンとリビングの境目の壁一部に使用し、シャビーな雰囲気を演出。

 

子どもを巻き込むアイディア

「これお願いできるかな?」と、娘さんに話す食卓でのつがねさんの姿は、見惚れてしまうくらいスムーズ。

キッチンで昼食の用意をしながら、子どもに楽しく手伝えるミッションを与えて、自然にタスクをこなしていく。

動き自体はテキパキしているようには見えないのに、子どもと会話をしながらいつの間にか出来上がって「いただきまーす!」の声。

すべてが優しい空気に包まれています。


▲取材中も娘さんがデザートのパフェを一生懸命作ってくれた。

 

つがねさん:
「元々私のキャパシティが狭いので、一人で頑張りすぎず、夫にも子どもにも意識的に協力してもらうようにしています。

子どもってグズっているときでも、お手伝いを頼んだり一緒にやろう!と言うとコロッとやる気スイッチが入ったりするんですよね。

頼っているぶん“今日は一緒に手伝ってくれたおかげで仕事が頑張れたよ!ありがとう”と伝えると、5歳の息子はなんだか誇らしそうで。

子どもながらに頼りにされていることが嬉しいのかな、とプラス思考で向き合うことにしています。
もちろんうまくいかない日もありますが(笑)」

 

例えば朝のひととき。
平日はトースターを使って息子さんがパン屋さんになりきり、週末には米粉パンケーキを混ぜたり、焼いたりと分業作業したり。

「どれだけ子どもの気持ちをのせられるか」という母と、子どもたちの楽しい思い出は日々蓄積されているようです。


▲自家製の梅シロップは、「梅の実を投げ入れるのが楽しかったみたい」と、娘さんが大張り切りで手伝ってくれたそう。

 


▲おはよう、てあらい、おしたく、と項目が書いてあるマグネット。
出来たら引っ繰り返して「できたよ」とクリアをすることで達成感を。
「“できたよ”は文字が書けるようになった頃だったので息子に書いてもらいました。
子ども用の物を作るときは本人も交えて作った方がそのものに対しても興味を持ってくれる気がします」

 

 

いいことばかりじゃなかったとしても、それを乗り越えて、時間が積み重なって作られていく、愛すべき家族たちとの時間は、かけがえのないもの。

すべてを母一人でこなすのではなく、「少しでも子ども自身が意思を持ってやれるように」と工夫しているつがねさん。

その結果、家族の笑顔が増えている。

仕事をしながら子どもとの毎日をいかに過ごすか、その一つのお手本がここにあります。

 

 

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連載「わが家のキッチン、暮らしのかたち」をご覧いただきありがとうございました。
ぜひ皆様の声をお聞かせください。
たくさんのご意見をお待ちしております。

text:Hitomi Takahashi

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